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 「2025年から逆算してERP(統合基幹業務パッケージ)の移行プロジェクトを推進してきた企業もある。このタイミングでサポート期間延長の発表とは、これまでの努力が水の泡と捉える企業がいるのではないか」。こう懸念を表明するのは、欧州SAP製品の主要なパートナーであるアビームコンサルティングの担当者だ。

 この懸念は欧州SAPが2020年2月4日(現地時間)に発表したサポートポリシーの変更に対するものだ。発表では最新のERPである「S/4HANA」のサポート期限を「2040年まで」と初めて明らかにした。これまでは「S/4HANAは最新のバージョンの発表から5年間はサポートを提供する」との方針を表明するに止まっていた。

 この発表以上に多くのユーザーやパートナーを驚かせたのが、2006年に発売したERPパッケージ「SAP ERP(ECC6.0)」のサポート期限の延長である。標準的なサポートサービス「メインストリームメンテナンス」の提供期間を「2025年末から2027年末へと変更する」と発表したのだ。

 バグの改修や法規制の変更へ対応するためのパッチの提供、新機能の追加といった標準的なサポートがメインストリームメンテナンスに該当する。会計や人事といった頻繁に法規制対応が必要な領域でSAP ERPを利用している場合、メインストリームメンテナンスは必須だ。新たなセキュリティー上のリスクに対する対応も含まれる。

 これまでSAPは2025年のメインストリームメンテナンスの終了までにS/4HANAに移行するよう、SAP ERPのユーザー企業に促してきた。日本国内で2000社とも言われるSAP ERPのユーザー企業が、10年弱の間で一斉に基幹系システムを刷新しなければならない状態になった。国内のSAPのコンサルタントは不足し、全ての企業が移行できるか不透明な状態だった。「SAPの2025年問題」とも呼ばれる。

 ところが今回のSAPの発表によって、2025年問題は「2027年問題」に先延ばしになった。SAP製品のユーザー会であるジャパンSAPユーザーグループ(JSUG)が2019年12月に発表した調査では、従来のERPからS/4HANAへの移行について「済み」「実施中」「検討中」のいずれかと回答した企業の割合は、2018年の65%から2019年は80%超に増えたという。

 多くのSAP ERPのユーザー企業が「そろそろS/4HANAへの移行を本格的に検討しなければ」というタイミングで延長を発表したことで、当分の間はSAPのユーザー企業やパートナーの間で混乱が続きそうだ。

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