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スタジアムでの撮影の様子(写真:ソニー)
スタジアムでの撮影の様子(写真:ソニー)
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 「当社が手がけてきた5GのPoC(実証実験)の中でも最も難しい要件だった」。ソニーで5Gを活用した映像制作システムの実証実験に取り組んでいる、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの担当者は、米国のアメリカンフットボールNFL(National Football League)の試合で実施した5Gの実験で求められた要件についてこう語った。

 この実験は、2019年12月1日に米国のヒューストンNRG スタジアムで開催された「ヒューストン・テキサンズ対ニューイングランド・ペイトリオッツ」で実施された。カメラマンがビデオカメラで撮影した試合の映像を商用の5G回線を使って、番組を制作する編集室まで伝送するというものだ。実験に参加したのは、ソニーグループでカメラ事業や放送機器事業などを手がけるソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズと、通信機器事業を手がけるソニーモバイルコミュニケーションズ、米国の大手通信事業者であるベライゾン(Verizon)、米国のテレビ放送局NBC Sportsである。

 ソニーによると、今回の実験に当たってNBC Sportsが出してきた要求は技術レベルが非常に高いものだったという。それもそのはず。アメリカンフットボールは米国の国民的スポーツであり、NFLはその最高峰リーグだ。NFLの年間売り上げは、日本のプロ野球(NPB)の約2000億円に対して1兆5000億円を超える。

 人気のイベントであるため、試合中継は高画質であることはもちろん、試合展開に合わせるためのカメラの切り替えは視聴者が違和感を抱かない程度の遅延時間に抑える必要がある。こういった要件は、無線で伝送する際に行う映像圧縮(エンコード)に厳しいものとなる。

 球技のように選手やボールなどが大きく動く映像を、高画質を維持したままで圧縮するには、どうしてもエンコード処理が重くなる。その上、遅延時間を短くするためにエンコード処理に使える時間は短い。さらにエンコード装置は持ち運びができるビデオカメラに搭載するため、処理する際の消費電力に制約も出てくる。

 今回の実験の目的は、5Gを実際にスポーツ中継に利用するための課題の洗い出しだった。そのため、実験で伝送した映像は、実際の放送には使われなかった。それでも「画質に関してはライブ中継で使える品質であると試合の放送を担当するNBC Sportsの技術部門の責任者から評価された」(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ)という。

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