がん保険や医療保険などを手掛けるアフラック生命保険が2020年3月に、顧客応対の質を高める目的で最新のAI(人工知能)技術を相次ぎ導入する。AIが営業担当者やコールセンターのオペレーターが顧客と交わす会話を分析して、リアルタイムにアドバイスするようになる。
今回稼働させる新システムは「営業サポートAI」「応対マニュアル自動表示AI」「3Dアバター付き音声チャットボット」の3つでいずれも2020年3月にも稼働させる。2020年4月には既に稼働させたコールセンター向けシステム「ビジュアルIVR」に新機能を加える。開発はAI関連の技術支援やコンサルティングを手掛けているパクテラ・テクノロジー・ジャパン、パクテラ・コンサルティング・ジャパンと連携して進めた。
新システム名 | 概要 | 稼働予定時期 |
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営業サポートAI | 営業担当者などと顧客の会話内容を踏まえて、すべき説明や提案など、成約の確率を高めるようなアドバイスを営業担当者にリアルタイムに示す | 2020年3月 |
応対マニュアル自動表示AI | コールセンターのオペレーターと顧客の通話内容を踏まえて、1万件以上の応対マニュアルから適切なものを自動検索して、オペレーターに示す | 2020年3月 |
3Dアバター付き音声チャットボット | Webサイトにアクセスした顧客に向けた音声チャットボット。立体感があるアバターが表情豊かに住所変更など顧客の要望に応じる | 2020年3月 |
ビジュアルIVR | 次世代型のIVRシステム。オペレーターが顧客と電話応対中、画面共有機能などを使って分かりやすく説明できるようにする | 2020年4月 |
保険の提案や顧客応対をAIがリアルタイムにアシスト
営業サポートAIは保険代理店の営業担当者が客先を訪問しているときや、コールセンターの営業担当者が電話セールスをしているときに使う。営業担当者がパソコンで専用システムを動かした状態で商談を開始すると、営業サポートAIが営業担当者と顧客の会話内容を解析して「保険の保証内容を説明する前に保険の必要性を説明しましょう」といった成約につながるようなアドバイスをパソコンの画面上にタイムリーに表示する。
土屋敦デリバリーコーディネーション部IT開発プロモーション課長は「経験が少なかったり、成約の成果がなかなか得られなかったりする営業担当者に使ってもらうことで、営業力の底上げを図っていく」と狙いを話す。成約できた営業活動の通話データなどをAIに学習させて、より的確なアドバイスを示せるようにする。
「応対マニュアル自動表示AI」はコールセンターのオペレーターが顧客と通話している最中に使うシステムだ。
オペレーターと顧客の通話内容の中から、「保険金の受取人を変更したい」といった音声をAIで解析したうえで、社内に蓄積する1万件以上あるマニュアルなどのデータを自動検索。受取人の変更マニュアルといった適切なものをオペレーターが使うパソコンの画面上に示す。「手順が複雑な手続きでもオペレーターがスムーズに応対できるようにする」と齋藤快デリバリーコーディネーション部ビジネスリレーション課課長代理は話す。
音声チャットボットのUIに立体的なアバター
ビジュアルIVRもコールセンターに関連した新システムだ。IVRは自動音声応答のことだが、音声通話だけでなく、SMS(ショート・メッセージ・サービス)やメール、Webなども活用できる機能を組み込んだ次世代型のIVRに発展させた。イスラエルのソフトベンダー、コールビューの製品を使っている。
システムは一部、2019年11月から稼働させている。電話で問い合わせてきた顧客が持つスマートフォンの画面に音声ガイダンスの選択肢を表示して、顧客がタップできるようにしている。システムが顧客のスマートフォンに向けてSMSでURLを送り、顧客がこのURLをタップすると、音声ガイダンスで伝えていた選択肢が画面上に表示される仕組みだ。顧客が音声ガイダンスを最後まで聞いたり、覚えておいたりする必要をなくした。
2020年4月にこのシステムの機能を強化する。通話中にオペレーターが使っているパソコンの画面を顧客のスマートフォンに表示する画面共有機能や、申し込み手続き用の入力画面を顧客のスマホ画面に表示する機能を加える。