全2314文字
PR

 東京都中央区の旧築地市場にほど近い倉庫で、箱に入れられた数十台のハードディスクドライブ(HDD)に向かって担当者が黙々と作業している。HDDに付いた金具を取り外す作業だ。HDDを物理的に破壊する前処理。破壊する機械に入れる前に金具を外しておかないと機械が壊れるため、前処理が必要になる。

ハードウエアリサイクルを手掛けるゲットイットの倉庫で大量のHDDの金具を電動ドライバーで外すところ
ハードウエアリサイクルを手掛けるゲットイットの倉庫で大量のHDDの金具を電動ドライバーで外すところ
[画像のクリックで拡大表示]

 ここは、パソコンやサーバー機器のリサイクルを手掛けるゲットイットの拠点だ。神奈川県庁で2019年12月に発覚したHDD流出事故を受けて、HDDの物理的破壊を求める顧客の要望が増えたという。

 HDDの物理的破壊には細かな作業が必要になる。その分、データを上書きして消去する手法に比べて数倍の料金を取れるという。

 短期的には業績にプラスになりそうだが、ゲットイットの広田優輝社長は浮かない表情で話す。「本来なら再利用できるはずのHDDを破壊してしまうのは、環境負荷を高めることになり、ハードウエアのライフサイクル全体を考えると必ずしも良いことではない」。ゲットイットの事業にとって、HDDを破壊してしまえば中古HDDの仕入れルートが細り、中長期的に影響が出る懸念がある。

「物理的破壊一辺倒は危ない」

 「神奈川県庁の事件を受けて、HDDの物理的破壊が無条件に奨励される雰囲気があるが、かえってデータ流出の危険を招く懸念がある。HDDに保存されているデータの種類によって適切な消去手法を使い分けるべきだ」。ゲットイットなどが加盟するデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)の技術顧問を務める沼田理氏はこう話す。沼田氏はこの分野の専門ベンダーであるオントラック・ジャパンのブランド・アンバサダーでもある。

HDDのデータ消去・復元技術に詳しい沼田理氏
HDDのデータ消去・復元技術に詳しい沼田理氏
[画像のクリックで拡大表示]