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 豊田合成がロボットハンドの製品開発を進めている。2020年2月12~14日に開催されたロボット技術の展示会「ロボデックス」(東京ビッグサイト)では、開発中の「触覚ハンド」を出展して、コーヒーをいれたりお菓子を給仕したりする「バリスタロボ」のデモンストレーションを披露した(図1)。

図1 バリスタロボ
図1 バリスタロボ
ロボットがポットやサーバー、ドリッパーを使ってハンドドリップでコーヒーを入れるデモを披露した。(写真:日経クロステック)
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 触覚ハンドはQBIT(本社東京)と共同開発を進めている2本指型のロボットハンド(図2)。指の内側の把持部分に豊田合成が開発したゴム材料「e-Rubber」を使った圧力センサーを備えている(関連雑誌記事)。ワークを把持した際の圧力を検出してハンドの把持力を制御することで、「固いものから、シュークリームのような柔らかいものまでさまざまなワークをこれ1つでつかめる」(同社説明員)。

図 触覚ハンド
図 触覚ハンド
2本指の内側にゴム材料「e-Rubber」を使った圧力センサーを備えている。(写真:日経クロステック)
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コーヒーのハンドドリップをデモする「バリスタロボ」

指先にe-Rubberを使った圧力センサーを備えている。

 e-Rubberは、誘電体を伸縮性電極で挟んだ構造をしたゴム材料。誘電体には、高分子材料「スライドリングマテリアル」(Slide-Ring Material:SRM)を採用しているのが特徴だ。SRMは直鎖状高分子のポリエチレングリコール(PEG)が環状のシクロデキストリン(CD)を貫通したネックレスのような「ポリロタキサン」構造をしており、大きく伸縮可能でつぶしても元に戻るといった特性がある。

 電圧をかけると両極の電荷が引き合ってクーロン力が発生し、誘電体が変形して薄くなる。これを積層すればアクチュエーターとして機能する。一方、変形すると静電容量が変化するのを利用して触覚・圧力センサーとして使える。「つぶした際の静電容量の変化が大きいため、低い圧力値を検出しやすいのが特徴」(同社説明員)という。

図 e-Rubberの構造と動作原理
図 e-Rubberの構造と動作原理
誘電体を伸縮性電極で挟んだ構造。柔軟ながらコンデンサーやキャパシターと同じ。アクチュエーターとしては、電圧をかけると両極にたまった電荷が引き合って薄くなる。これを何層も積み重ねるなどして動作距離を増やす。誘電センサーとしては、外力によって厚さが変わることによる静電容量の変化を検出する。(豊田合成の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 触覚ハンドは圧力センサーとしての特性を生かして、把持した際の圧力を検出できるようにした。デモンストレーションでは、アームの先端に同ハンドを装着したデンマーク・ユニバーサルロボット(Universal Robot)の協働ロボット「UR」が、コーヒーサーバーにドリッパーをセットしたり、ポットからドリッパーにお湯を注いだり、ドリップしたコーヒーをサーバーから紙コップに移し替えたりするハンドドリップ作業をこなした。最後は、ロボットがお茶請け用のマカロンをつかんで、決められた位置に置いて見せた。把持の圧力のしきい値は、ポットやサーバー、ドリッパーからマカロンまでいずれも同じ設定という。

 豊田合成としては、今後の開発で耐久性などを調べて2020年度内に製品化したいとしている。1つのハンドでいろいろなものをつかめる特徴を生かし、工場よりもむしろ店舗などでのサービスロボットへの適用を想定しているようだ。