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 ガス販売大手の日本瓦斯(ニチガス)がIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器を使って、顧客のガス利用状況を自動で把握する仕組み作りに乗り出した。LPWA(ローパワー・ワイドエリア)の無線通信機能を備えたIoT機器を自社開発。2020年2月から、LPガスを供給している87万台のガスメーターに段階的に設置する。IoT機器の既製品を使わず、自社の業務に必要な機能を見極めて独自に設計することで、10年間バッテリーが持続するなど最適な仕様を実現したという。

 電力会社やガス会社などの大手エネルギー企業は近年、電気やガスの使用量を自動送信するスマートメーターの設置を相次ぎ進めている。こうした動きのなか、2003年ごろから基幹系システムをクラウドで再構築したり、スマートフォンによる社内業務の効率化などを進めたりしてきたニチガスも、LPガスを対象にスマートメーター化に乗り出した。

 ニチガスが開発したIoT機器「スペース蛍」は、客先に設置した既存のガスメーターとつないで使う。IoT向けデータ通信サービスを提供するソラコムと共同で開発した。通信端末を開発しガスメーターと連携させることで、スマートメーターを一から開発して既存のメーターと交換するよりも、コストや更新期間を抑えられると見込む。

2020年2月からニチガスが本格設置を始めた無線通信機能を備えるIoT機器「スペース蛍」
2020年2月からニチガスが本格設置を始めた無線通信機能を備えるIoT機器「スペース蛍」
(出所:日本瓦斯)
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 スペース蛍はメーターの電気信号をデジタルデータに変換する機能などを備えている。メーターと接続すると、メーターの検針データを1時間に1度の頻度で取得。ソラコムのネットワークサービスを経由して1日に1回、24時間分のデータをニチガスのIoTデータ収集基盤「ニチガスストリーム」へ送信する。

 採用する主な通信方式はSigfoxだ。ただし、崖のそばにメーターがあってスペース蛍もそこに配置する場合、Sigfoxによる通信が難しいことが想定される。そこで代替手段として、既存のLTE回線を活用したLPWA規格「LTE-M」でもデータを送信できるようにしている。

きめ細かい検針でエネルギー活用提案などにつなげる

 ニチガスは2019年1月から7月にかけて、IoT機器のPoC(概念実証)や試作機の開発を進めた。その後、2019年8月から10月までに量産版のスペース蛍を開発。2020年2月1日から取り付けを始めた。今後15カ月ほどの間に87万台のスペース蛍を取り付けていく。

 これまでガスメーターのデータは、担当者が検針で世帯を訪問する月1回の頻度でしか取得できなかった。スペース蛍を使うことで、1時間単位できめ細かく自動的にメーターの情報を取得できるようにする。

 スペース蛍の設置を機に、検針作業の効率を高めることに加えて「顧客に向けたエネルギー活用に関する提案や、ガスボンベ配送の最適化、ガス保安業務の高度化などにつなげていく」とニチガスの松田祐毅執行役員エネルギー営業本部情報通信技術部長は見通しを語る。

 スペース蛍によって把握した1時間おきのガス利用状況を基に、効率的なエネルギー活用を顧客に提案する。冬の朝にガスの利用が少ないといった顧客の利用状況をつかむことで、「夜は電気代が安いエアコンによる暖房が効率的だが、朝は部屋の中が早く暖まるガス機器を使うほうがよい」などエネルギーの使い分けを勧める。

 ガスボンベの配送については、ガスの検針データを毎日取得できることからガスボンベの残量を正確につかめるようになる。この情報を基にガスボンベの交換頻度を減らしていく。