日立オートモティブの次世代ステレオカメラは、ハードウエアとソフトウエアの改良で広角化と検知距離の維持を実現した。ハード面ではコストアップをできるだけ抑えるために、改良を最小限にとどめた。
具体的には、左右のレンズを新型ステレオカメラより少し広角にした。CMOSセンサーの画素数は新型ステレオカメラ(120万画素)より少し増やし、画像処理チップの処理速度も新型ステレオカメラより少し速くする程度にした。
ソフト面では、映像の撮影方式を変更した。新型ステレオカメラでは、左右のカメラで車両前方の正面を撮影し、両方のカメラで撮影した映像の重なる部分をステレオ視して対象物を検知する。先述した通り、この方式では水平視野角は40度であり、交差点には対応できない。
次世代ステレオカメラでは、左右のカメラで撮影する範囲をずらす方式に変えた。具体的には左のカメラで右前方を撮影、右のカメラで左前方を撮影する。これにより、従来よりも3倍以上広い(120度以上)の水平視野角を確保した(図3)。
高速道路におけるACCや車両前方の先行車や歩行者を対象にした自動ブレーキの場合は、水平視野角が広くなくても対応できる。そのため、通常のステレオカメラとして機能させる。
左右のカメラで撮影した映像が重なる中央部は、従来と同じようにステレオ視して対象物を検知する。ACCなどの性能を落とさないため、検知距離は従来と同じ120mを確保した。
一方、交差点の右左折を対象にした自動ブレーキでは、広い水平視野角が必要になる。そこで、ステレオカメラを2つの単眼カメラとして使う。
左右のカメラでそれぞれ撮影した周辺部は、単眼視によって対象物を検知し、時系列の画像処理によって立体物として認識する。中央部のステレオ視と周辺部の単眼視の仕組みをシームレスに連携させることで、広角化と検知距離の維持を両立させた。