全2684文字
PR

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型肺炎)が、日本企業の中国工場に大きなダメージを与え始めた。2020年2月25日時点の情報では、“震源地”である武漢市(湖北省)やその近くの工場は、依然として再稼働のめどがたたない。湖北省から離れた中国工場の中には、生産再開にこぎ着けたところもあるが、その多くは部分的な稼働にとどまっている。フル生産にはほど遠い。

 最も深刻な影響を受けているのは、湖北省に工場を構える企業だ。現地当局が企業の休業期間を2020年3月10日まで延期した。これにより、武漢市に3工場(第1~3工場)を持つホンダは、同年2月24日の週に予定していた再稼働日を「3月11日以降のできる限り早い段階」(同社)に引き延ばした。湖北省には自動車関連の工場や拠点が集積しており、部品メーカーの生産や在庫の状況を確認しながら慎重に稼働計画を立てるという。

 日産自動車が持つ3工場も再稼働の時期が見えない。同社は湖北省に1工場(襄陽工場)、その北隣に位置する河南省に2工場(鄭州工場および鄭州日産の工場)を構えており、2月24日以降の生産再開を目指していた。だが、先述した現地当局の通達もあり、「再稼働の日程については検討中」(日産自動車)とする。

 大型空調機を造るダイキン工業の武漢市の工場も、同様の理由で3月10日まで動かない。再稼働の時期は未定という。同社は、いわゆる「地産地消」の生産戦略「市場最寄化戦略」を立てている。そのため、アジアには中国以外にタイやベトナム、マレーシア、日本などに工場がある。そこで、こうした国の工場で、中国工場の分の製品や部品を一時的に代替生産する準備を進めている。

 日立建機も工場の再稼働日を見通せていない。同社は湖北省の東隣に位置する安徽省合肥市に工場を持つ。現地当局からの認可は受け、2月20日から、業務の一部、具体的には生産済みの在庫を出荷し始めているが、生産再開には至っていない。理由の1つは、従業員を確保できないこと。「中国では正月休み(春節)後に人を集めるのがそもそも大変である上に、湖北省に里帰りしている人もいる。加えて現在、中国政府が中国全土で人の移動を規制しており、人を集めにくい」(同社)。

表1 大手企業の中国現地工場の稼働状況
表1 大手企業の中国現地工場の稼働状況
2020年2月25日時点のヒアリング状況(作成:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

フル生産には遠く及ばない

 湖北省以外に工場を持つ日本企業は、生産を再開しているところが多い。中には予定を前倒しして生産を再開した企業もある。例えば、いすゞ自動車は、新型ピックアップトラックを造る南昌市(江西省)の工場の稼働を、予定を4日早めて2月20日から再開した。三菱自動車は、長沙市(湖南省)の完成車工場の再稼働日を3日前倒しし、2月24日から生産を再開している。

 ただし、いずれの企業の工場も再稼働に踏み切ったものの、生産レベルは低い。従業員の安全性や人数、部品在庫の状況などを確認しながら「段階的に生産レベルを高めていく」(ソニー)考えだ。新型肺炎の問題が深刻化する前(春節前)には遠く及ばない。最良のケースでその生産レベルはフル生産の半分といった水準だ。例えば、マツダは南京市の工場を2月17日から再稼働させたが、「現在は1直で生産中。2直への移行時期は未定」(同社)という。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料