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 新型コロナウイルス対策の一環として、企業がこぞってテレワーク導入に動いている。必要なITツールはでそろった。会員登録だけで利用できるWeb会議のクラウドサービスや、専用ソフト不要でリモートアクセス環境を構築できるソフトウエアなどだ。2020年2月下旬から期間限定でテレワーク関連のツールを無償提供するITベンダーが増え、費用面でも着手しやすい状況だ。

 ではこれらのITツールを導入しさえすれば、明日からでもテレワークを実践できるか。そう簡単ではなさそうだ。これまでテレワークの準備を全くしてこなかった企業は「労働関連の法律が関係する就業規則の変更など、IT以外のルール整備に数週間が必要になる」。特定社会保険労務士/行政書士で人事コンサルティングを手掛けるSRO労働法務コンサルティングの杉本一裕氏は、こう指摘する。

就業規則の変更が必須

 テレワークを実施する際に必ず変更すべき就業規則は勤怠管理に関する項目だ。テレワーク時の勤務時間の記録方法に関する文言を、就業規則に追加する必要がある。

 追加すべき内容としては、「テレワーク時にも従来と同様に始業と終業のタイミングを記録して勤務時間を算出する」といったものがある。始業時間などの記録には、業務開始のタイミングを知らせる機能を持ったテレワーク用のソフトウエアを導入したり、チャットなどを通じて上司に報告したりといった方法が一般的だという。これらに加えて業務報告書の提出を義務付け、業務内容を確認する企業もある。

 「みなし労働時間」で管理する方法もある。この場合は「テレワーク時には定時勤務と同様の時間労働したとみなす」といった文言を追加する。新たにテレワーク用の勤怠管理の仕組みを導入するのが難しい企業や正確な勤務時間の測定が難しいと考える企業に向いているという。勤怠管理の負荷が下がる半面、残業しても反映されないデメリットがある。