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 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響が、深刻な数字となって表れ始めた。中国市場における2月の自動車販売台数は、トヨタ自動車が前年同月比(以下、前年比)で70.2%減。マツダが同79%減で、ホンダが同85.1%減。三菱自動車に至っては同90.7%減と大幅に落ち込んだ。

 「中国市場の販売の見通しは全く立たない。販売店の営業も100%になっていない。今、最も心配しているのは、中国市場における消費マインドの冷え込みだ」。こう嘆くのは、日本の自動車メーカーの中では最も販売の落ち込みが小さいトヨタ自動車だ。マツダは「中国市場の今後の販売については分からない」と言う。ダイキン工業のような「中国市場の販売が回復する兆しを見せており、最悪の状況は脱しつつある」(同社)という前向きな見方は、日本企業の中では少数派だ。

 とはいえ、明るい話題がないわけではない。ホンダが新型コロナウイルスの発生地と言われる湖北省武漢市に設けた工場を2020年3月11日に再稼働させた。武漢市では現地当局が企業の休業期間を同月10日まで延期していた。これを受けてホンダは「3月11日以降のできる限り早い段階で生産を再開する」と宣言していたが、その通りとなった。日立建機も、湖北省の東隣の安徽省合肥市にある工場を3月2日に再稼働させ、大型シャベルやホイールローダーなどの生産を再開している。

ダイキンの工場はまだ動かず

 販売に比べると、中国における生産は比較的早く回復しつつある。中でも早い回復を見せているのが、いすゞ自動車だ。同社は小型と中型、大型のトラックとピックアップトラックを生産する重慶市の工場を2月18日に再稼働させ、3月11日時点で生産レベルを9割まで高めている。新型ピックアップトラックを造る南昌市の工場は2月20日に生産を再開させ、3月5日からは全面稼働に移行。部品の入手状況により生産量が変動するが、それでも平均すると6割の生産レベルを維持しているという。トラックは部品点数が1万5000~2万と乗用車に比べて少ない上に、ほぼ受注生産の形を採るため、乗用車よりも回復が早いのだろう。

 ホンダの武漢市の工場は、再稼働したとはいえ、出社した従業員は全体の一部であり、生産量も極めて少ない。武漢市には第1から第3まで3つの工場があるが、再稼働したのはそのうちの一部だ。トヨタ自動車も比較的回復が早く、長春市と広州市の2つの工場で3月9日から2直体制での生産にシフトした。だが、それでも新型コロナ発生前の生産レベルには戻っていない。天津市の工場は依然として1直体制を続けており、本来は2直体制だから生産レベルは1/2程度にとどまっている。多くの日本企業が「部品の在庫や物流の状況を見ながら生産レベルを徐々に高めている」(三菱自動車)ものの、フル生産にはほど遠い状況だ。

 大型空調機を造るダイキン工業の武漢市の工場は、依然、稼働していない。同社によれば、武漢市では現地当局が工場再開について優先順位を設定している。まずは生活必需品の工場、続いて経済への影響が大きい自動車の工場、最後に機械関連の工場だという。すなわち、武漢工場の優先順位は3番目というわけである。同社は生産再開に向けて部品や人員の準備は済ませており、現地当局からの再稼働の許可を待っている状況だ。

表1 大手日本企業の中国現地工場の稼働状況
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表1 大手日本企業の中国現地工場の稼働状況
2020年3月11日時点のヒアリング状況(作成:日経クロステック)