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 日本市場で業績を伸ばしてる半導体メーカーがある。ハイエンドアナログIC専業メーカーの米Maxim Integrated(マキシム・インテグレーテッド)だ。同社のグローバルでの売り上げは、ここ数年ほぼ横ばいだが、「社内での日本地域の売り上げは右肩上がり」(マキシム・ジャパン 代表取締役社長 兼 米本社のマネージングディレクターの林 孝浩氏)という。なお、地域ごとの業績は非公表である。

マキシム・ジャパン 代表取締役社長 兼 米本社のマネージングディレクターの林 孝浩氏
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マキシム・ジャパン 代表取締役社長 兼 米本社のマネージングディレクターの林 孝浩氏
撮影:加藤 康

 同社の日本での好調な業績を支えているのが、GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)と呼ぶ製品群である。主にADAS(先進運転支援システム)や自動運転に向けたもので、同軸ケーブルやシールド付きツイストペアを使って車載カメラからの非圧縮のデータを、映像解析用のコンピューターに送信する。現在、最大12Gビット/秒の製品を開発中である。

 ADASや自動運転に向けては、3つのトレンドがある。(1)搭載カメラ数の増大、(2)処理能力の高いコンピューターに複数のカメラ映像を集中させる方式の採用、(3)高ダイナミックレンジ化/高精細化/高フレームレートである。(1)と(2)については、例えば、米Tesla(テスラ)の「モデル3」において、日経クロステックおよび日経BP 総合研究所の調査によれば、外部監視用に8個、車内監視用に1個の合計9個のカメラを搭載しているが、これらはすべて同軸ケーブルで直接オートパイロットECUと呼ぶ中央コンピューターに映像が取り込まれる形態を採用していることが分かっている注1)。ADASも自動運転も発展途上の技術であるため、最適なカメラの数の模索や認識アルゴリズムの改良が今後も続けられる。このために、画像処理の集中化が進められている。(3)については、遠くのモノや人を素早く発見するためには高解像度と高フレームレートが必要であり、暗い場所や明るい場所が混在したような場所ではダイナミックレンジの広い画像が欠かせない。こうしたニーズに応えるために、さらにデータ転送速度を向上させたICを今後、投入していくという。

注1)モデル3のシリアルリンクには、米Texas InstrumentsのICが搭載されている(日経クロステックおよび日経BP 総合研究所の調査)。

 同社のGMSLのICには、データのリアルタイム性の確認や、IC同士の相互認証の仕組みも用意されているという。前者は、何らかの問題でメモリー上の映像データが更新されず、同じ画像が送り続けられる問題を回避するためのものだ。後者は、自動運転用のコンピューターに、仕様外のカメラが取り付けられるのを防ぐための機能である。

 なお、GMSLなどのシリアルデータ伝送の対抗馬として、車載Ethernetがある。林氏は「車載カメラ用のデータ伝送インターフェースとしては、GMSLのようなシリアル伝送方式が主流になる」との見方を示した。大容量のカメラの画像ローデータをリアルタイムに扱うのは、シリアル伝送が優れているためである。「車載Ethernetが向いているのはIP(Internet Protocol)伝送が必要な部分だ」(林氏)という。

 このほか、同社は日本市場において、車両向けにはセキュアな電池監視用IC、産業用にセンサーとアクチュエーターを接続し制御するための仕様「IO-Link」用のトランシーバーIC、医療用向けに使い捨て部品向けの認証用ICなどの拡販にも力を入れている。「日本には、自動車や産業、医療の分野において最先端の取り組みをしている企業が多く、今後も成長が期待できる」(林氏)とした。

■変更履歴
当初第2パラグラフにおいて、「現在、最大12Gビット/秒の製品を出荷中」としていましたが、正しくは「開発中」でした。お詫びして訂正します。また、情報の出典を明確にするため、Teslaの「モデル3」の内部構造については日経クロステックおよび日経BP 総合研究所の調査であることを明記しました。本文は追加・変更済みです。 [2020/03/19 17:30]