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 カシオ計算機が2020年3月に発売した女性向け耐衝撃ウォッチ「BABY-G」の新製品。その製品の一部に、同社は従来にない表現を実現した新しい成形技術を適用している*1。複数の色が不規則に流れるように混ざり合うマーブル模様(大理石模様)の表現だ(図1)。同社はこの模様を、印刷や塗装などの2次加工ではなく射出成形で実現した。

*1 具体的には、新シリーズである「BGA-270」シリーズの1つ「BGA-270M-7AJF」と既存シリーズの新色である「BA-110PI-2AJF」と「同4AJF」にマーブル成形を適用している。

図1:マーブル模様を適用した「BABY-G」の新製品
図1:マーブル模様を適用した「BABY-G」の新製品
ベゼル部分にだけマーブル成形を適用した新機種「BGA-270M-7AJF」(中)、既存シリーズの新色である「BA-110PI-2AJF」(左)と「同4AJF」(右)。(写真:日経クロステック)
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 実はこの成形(以下、マーブル成形)では、「全ての製品で色や柄に違いが出る」(同社)という。従来、量産品における品質管理では多くの場合、高い均一性を良しとするのが“常識”だ。しかし、マーブル成形の品質管理には当てはまらない。以下、マーブル成形をどう実現し、品質を制御しているのかをみてみよう。

白/赤/青のマーブル模様を射出成形で実現

 今回のマーブル成形では材料として熱可塑性ポリウレタン(TPU)を使う。例えば、ベゼルにマーブル成形技術を適用した「BGA-270M-7AJF」では白色と青色、赤色が混じり合う「夏らしいトリコロールカラー」(同社)を表現した(図2)。これを実現するため、射出成形機に投入するペレットとして3種類を用意。白色をベースに青色と赤色のペレットを数%ずつ混ぜたものを用いる(図3)。

図2:べセルにマーブル成形を適用した「BGA-270M-7AJF」
図2:べセルにマーブル成形を適用した「BGA-270M-7AJF」
白/赤/青色のマーブル模様のベゼルを射出成形だけで実現している。(出所:カシオ計算機)
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図3:マーブル模様の成形に用いる樹脂ペレット
図3:マーブル模様の成形に用いる樹脂ペレット
白色をベースに、赤色と青色のペレットを数%ずつ混ぜている。(写真:日経クロステック)
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 単に3色のペレットを用意しただけでなく、「ベースの白色は溶けやすく、着色ペレットは溶けにくく、と溶けるタイミングをずらせるように融点に差をつけた」(山形カシオ 時計統轄部部品技術部成形技術課の石山憲史氏)。さらに、ペレットの形状や大きさを調整して着色ペレットの分散性を高め、1ショット(1つの部品)に着色ペレットが確実に入るようにした。

 こうしたペレット段階での工夫に加えて、成形条件の最適化も進めた(図4)。成形温度やスクリューの回転速度といった条件を変えながら試行錯誤し、材料の溶け具合や混ざり合い方をコントロールして最適な模様がでるようにした。例えば、温度が低すぎると着色ペレットがほとんど溶けずにそのまま残ってしまう。逆に温度が高すぎると3色が過度に混ざり合って単色に近くなってしまう。

図4:成形温度による柄(色と模様)の違い
図4:成形温度による柄(色と模様)の違い
複数色のペレットの混ざり具合が成形温度によって変わってくる。(写真:日経クロステック)
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 「条件を細かく変えながら成形テストを繰り返し、その都度成形サンプルを他の開発メンバーに見せて確認した」(同氏)という。こうして、製品としてあるべきマーブル模様のイメージを共有しながら最適な条件を見つけていった。

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