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 2020年3月下旬は2019年12月期決算の企業の株主総会が集中する。例年とは異なり、新型コロナウイルス感染症が広がり、大型イベントの自粛が続くなかでの開催となる。各社は対応に苦慮しているがITを駆使した工夫で乗り切ろうとする動きが出ている。2020年6月の「株主総会ピーク」でも参考になりそうだ。

「延期」は可能だが…

 12月決算企業はIT企業にもある。例えば楽天やGMOインターネットだ。両社は個人投資家に人気があり、株主総会への出席者は毎回いずれも1000人前後に上る。

 多くの株主が集まる株主総会の場で新型コロナの感染が広がれば、社会的批判を免れない。だが娯楽イベントのように中止や「無観客開催」というわけにもいかない。

 実は法的には延期という選択肢はある。新型コロナの影響が深刻化する状況を踏まえ、法務省は2020年2月28日、決算後3カ月以内に株主総会を開催しなくても「合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる」という文書を出し、延期を容認した。

 だが上場企業の間で延期する目立った動きは見られない。ある上場企業の担当者は「既に株主に招集通知を出すなど準備を進めているため、現実的に延期は困難」と明かす。上場企業は株主総会決議を前提に役員人事などを内定・公表しているという事情もある。

1000人が出席する楽天、検温や議事短縮で対策

 楽天は2020年3月27日に東京・高輪にあるホテルの大宴会場で株主総会を開く予定だ。2019年は932人、2018年は1693人の株主が出席しており、12月決算企業の株主総会の中でも規模が大きいといえる。

 楽天は現在、株主に対して、なるべく会場に来ず、事前にインターネットか郵送で議決権を行使するよう呼びかけている。ただし、事前行使では株主が会社側に質問して判断するというやり取りができない。

 そのため、来場する株主にはマスクの持参・着用を訴えている。さらに入り口で検温し、発熱している人や体調不良と思われる株主は入場を断るとしている。海外から帰国して14日間を経過していない株主は受付で申し出るよう依頼もしている。株主総会の開催時間を短縮するため、議事のうち、会社からの報告事項や議案の詳細説明を省略するという。

富士ソフトは当日に在宅質問・投票も可

 楽天の対策はIT企業以外を含めた多くの企業で共通する。加えてITを活用して工夫を凝らすIT企業もある。例えば富士ソフトは2020年3月13日に東京・秋葉原の自社オフィスで株主総会を開催した際、初めて「インターネット出席」を導入した。

富士ソフトの株主総会会場。会場のタブレットと同様のペーパーレス会議ツールをインターネット経由でも使える
富士ソフトの株主総会会場。会場のタブレットと同様のペーパーレス会議ツールをインターネット経由でも使える
(出所:富士ソフト)
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 これは会場に来なくてもネット経由で「出席」できる仕組みだ。ネット出席した株主は実際に会場を訪れた株主と同様に質問でき、会社側の回答を聞いたうえで議決権を行使できる。2019年の出席株主は約200人だったが、今年は170人に減ったもののうち11人がネット出席だったという。

富士ソフトの株主向け議決権行使画面。取締役候補者の各人について選任賛成・反対のボタンをタップする
富士ソフトの株主向け議決権行使画面。取締役候補者の各人について選任賛成・反対のボタンをタップする
(出所:富士ソフト)
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 ネット出席の具体的な仕組みには富士ソフト自身が開発販売するペーパーレス会議ツール「moreNOTE(モアノート)」を使った。同ツールを使うとネット出席した株主はパソコンやタブレットの画面上で議事を閲覧できる。質疑応答には電話を併用した。質疑応答後に、画面上でボタンを押して議決権を行使する流れだ。

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