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 ゼロエミッションを実現しなければならないが、電気自動車(EV)だけでは不可能――。乗用車以上に電動化の難しさを実感しているのがトラックやバスなどの商用車だ。ドイツ・ダイムラー(Daimler)グループとトヨタ自動車グループという日欧の商用車大手が、EVに次ぐ一手として燃料電池車(FCV)の開発に注力し始めた(図1)。

図1 三菱ふそうが開発した燃料電池(FC)トラックの試作車
図1 三菱ふそうが開発した燃料電池(FC)トラックの試作車
「eCanter F-Cell」と名付けた車両で、1回の水素充填で300kmの航続距離を確保することを目指す。(画像:三菱ふそうトラック・バス)
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 市場調査会社の富士経済によると、全世界における商用車のFCV市場は2030年度に、2018年度比で38.4倍の1兆5392億円になるという。なおこの数字は、燃料電池(FC)をパワートレーンとするトラックやバスに加えて、フォークリフトも含む。

商用車はFCVかEVの二択に

 「2039年までに日本で投入する全ての新型トラックとバスを、二酸化炭素(CO2)を排出しない車両にする」。こう宣言したのは、三菱ふそうトラック・バス社長のハートムット・シック氏である。同社は商用車市場で世界最大手のダイムラー傘下で、グループの電動化戦略と歩調を合わせる。

 同社は2020年3月26日にオンラインで記者会見を開き、「EVとFCVの2つ(のパワートレーン)に絞って開発を進めることでゼロエミッションを達成していく」(同氏)方針を明らかにした。同氏によると、「走行中にCO2を排出するハイブリッド車(HEV)の開発を中止しており、天然ガス車も(将来的に)製造していかないことを決めた」という。

 三菱ふそうは2017年に小型のEVトラック「eCanter」の量産を始めた(図2)。現在、日米欧で150台程度が稼働しているが、その中でEVトラックの限界も見えてきた。最大の課題は積載量で、「ディーゼルトラックに比べて最大で400kg減る」(同社)。理由は電池が重いからだ。

図2 三菱ふそうのEVトラック「eCanter」
図2 三菱ふそうのEVトラック「eCanter」
セブン-イレブン・ジャパン仕様。1充電当たりの航続距離は100kmである。(撮影:日経クロステック)
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 eCanterの航続距離は約100kmで、都市部の決まったルートを配送する用途では充電せずに1日使える。だが、より長距離を走る用途では電力が不足し、電池をより多く積めば最大積載量をさらに削らざるを得ない。

 同社副社長で開発本部長を務めるアイドガン・チャクマズ氏は、「最大積載量を考えると、EVトラックが活躍できる航続距離は200kmが限界」と分析した。200kmを超える航続距離を備えるゼロエミッションのトラックを実現するためには、FCに頼る他ないという。

 こうした判断の下、三菱ふそうは2020年代後半までにFCトラックを量産すると決めた。量産するFCトラックの車格などは「今後数カ月で検証し、決定していく」(シック氏)。ダイムラーグループはトラックに先行して、FCバスを2022年に量産する計画。FCスタックや水素タンクなどの主要部品や開発資産は、乗用車を含めてグループで共用しながらコストを低減していく。