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米アップル(Apple)は2020年3月25日に、新型iPad Proを投入した(関連記事)。最大の特徴は、背面カメラ部に同社が “LiDARスキャナー”と呼ぶ、深度センサーを備えたことである(写真1)。
新型iPad Proの深度センサーは、背面のカメラモジュールにある(写真2)。iPhone 11 Proでは、望遠、広角、超広角という3つのカメラを備えたが、新型のiPad Proではカメラを広角と超広角の2つにとどめ、望遠カメラの代わりに、深度センサーを搭載した。屋内および屋外で5mの距離までの物体の深度情報を取得できるという。
この深度センサーによって可能になったのが、リアルなAR(拡張現実)の実現である。アップルはこれまでも、AR用にツールキットを用意してきたが、空間の把握は画像認識によるものだった。空間的に広がる床の位置は認識できるものの、床の上に置かれた物体などの位置を認識することは苦手だった。例えば、床の上に置かれた椅子の後ろにCGの物体を置いたつもりでも、椅子の前にあるように表示されたりする。今回の空間認識センサーによって、物体の空間的な位置を把握できるので、CGが物体の後ろにあれば隠れるようになる(写真3)。
物体の長さや角度も画像認識よりも正確に取得できるようになる。この機能を使って例えば、正確な理学療法指導に使えるようになるという(写真4)。