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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ措置として、政府や東京都は企業に向けて、ノートパソコンなどを使って自宅で働く「在宅勤務」を強く呼びかけている。在宅勤務はITを使ってオフィス以外で働く「テレワーク」の一種だ。

 要請を受け、テレワークを緊急導入する企業が増えている。テレワークの普及に向けて東京都が国と連携して設立した東京テレワーク推進センターには「2020年2月以降、在宅勤務をしたいという企業からの問い合わせ件数は従来の10倍に増えた」(湯田健一郎事業責任者)という。問い合わせは都内の企業からが中心だが、首都圏以外の企業からの問い合わせも多いという。

東京テレワーク推進センターの湯田健一郎事業責任者
東京テレワーク推進センターの湯田健一郎事業責任者
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 同センターが開催しているテレワーク関連のWebセミナーへの参加者も急増している。「2020年3月半ばから3回、新型コロナ対策としてテレワークに関するWebセミナーを実施したところ、500社以上が参加した」(同)。

 背景にはテレワークに対する経営トップの本気度が変わってきたところが大きい。「経営トップがテレワークをやると決断したものの緊急でどう始めればいいのか」。湯田事業責任者によると2020年2月以降、こういった相談が増えたという。以前は「ボトムアップでテレワークを普及したいが、経営トップにどう理解を得ればいいのか」といった相談が中心だった。

 新型コロナの感染拡大を防ぎながら、企業として最大限事業を継続したい――。外出自粛が続くなか、在宅勤務を中心としたテレワークをいかに回していくかが企業にとって喫緊の課題となっている。

テレワーク導入の勘所、平時と緊急時はずいぶん違う

 企業がテレワークを導入する場合、本来であれば「業務の見直し」「テレワークをするうえでのルールやITの整備」「社員教育」といったプロセスを踏んで、トライアルを経てから社内展開するのが理想型だ。しかし、緊急導入の場合、理想型では時間がかかりすぎる。

 湯田事業責任者は「緊急時ならではのポイントを押さえて迅速に導入を進めていく必要がある」と指摘する。具体的には「ITの整備を中心に据えて進めていくとよい」という。

 オフィスワークはノートパソコンやクラウドサービス、社内システムなどのITを使って進めていくケースが大半だ。テレワークでも同様にITを使えるように整備するのが近道というわけだ。湯田事業責任者への取材を通して、テレワークの緊急導入に向けてITを整備する際、5つのポイントがあると分かった。

テレワークの緊急導入における、IT整備の5つのポイント
ポイント概要や具体例
IT導入を前提とするITの導入や活用を前提にテレワークが可能な仕事を見極める。日々社内で取り組んできた仕事を「利用するシステム」「システムの利用者」「実施している場所」「紙利用の有無」といった観点で整理。そのうえでITを適用できる仕事を見極めていく
自社に合ったITを選ぶITを導入する場合、自社に合ったものを選ぶ。「社員が利用しやすいか」「高いレベルで情報セキュリティー対策を講じられるか」といった観点でITを選ぶ
導入済みのITを見直す運用中のITをテレワークでも利用できるようにする。グループウエアクラウドを普段利用していても、社内からしか使えないケースもある。テレワークをする社員も利用できるように設定を見直す
ITの組み合わせでしのぐ場合によっては複数のITを組み合わせて利用する。社内情報を多く管理しているグループウエアクラウドが備えるWeb会議機能を社外とのコミュニケーションに利用するのが難しければ、他のWeb会議サービスを別途採用する
優先順位を付けて導入する導入するITが複数ある場合、優先順位を付ける。まず「社員が個人の仕事を進められるようにするIT」「コミュニケーションを取れるようにするIT」の導入や整備を優先させる。その後、「勤務状況を把握するIT」の導入や整備を進める

第1のポイント: IT導入を前提とする

 最初のポイントは「IT導入を前提とする」である。ITの導入や活用を前提にして、テレワークが可能な仕事を見極めるという意味だ。

 「ITを導入すればすぐにテレワークに移行できる仕事を見つけて、そこから始めるとよい」と湯田事業責任者はアドバイスする。飲食業やサービス業などの担当者にありがちなのは「そもそもテレワークできる仕事はない」と最初から諦めてしまうケースだ。しかし「テレワークが難しそうな業種でも日々の仕事を整理していけば、移行できる仕事は見つかる」(湯田事業責任者)。

東京都が業種ごとにテレワーク活用ヒントをまとめた冊子。製造業、医療・福祉、建設などの業種でテレワークをする際の参考情報を紹介している
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