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 「ハイブリッド車(HEV)を持っていない自動車メーカーは、2024年から(中国が21年以降に導入を模索中の)“低燃費車”への取り組みから撤退していくと思われる」――。IHS MarkitシニアアナリストのShan Wang氏は、環境規制の強化が進む中国では、簡易HEVを“低燃費車”として活用できるのは実質23年までになると示唆した。

 この“低燃費車”とは、中国が、自動車に対する環境規制の1つである「企業平均燃費(CAFC)規制」において、21年から新たに導入しようとしている新カテゴリーである。「新エネルギー車(NEV)規制」と並び中国の自動車に対する環境規制の両輪となるもので、2つ合わせて「デュアルクレジット規制」とも称される。

 NEV規制は、中国国内で自動車を3万台以上生産もしくは輸入する企業に対して、ある比率以上のNEVの販売を課すもの。電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)がその対象となる。一方、中国国内で自動車を2000台以上生産もしくは輸入する企業に対して、CAFCを目標値以下に抑えるように求めるのが、CAFC規制である。

 中国では21~23年に課すNEV規制を現行のものよりも強化する方針。一方で企業燃費の低減に努力した企業に対する軽減措置として非NEVの中に「低燃費車」(燃費がその年のCAFCの目標値以下のもの)のカテゴリーを設ける見通しだ。中国が19年9月に公表した21~23年NEV規制の第2次ドラフトでは、低燃費車は、NEV規制で要求されるクレジット(NEVクレジット)が半分に軽減される。1/5まで軽減されるとしていた19年7月発表の第1次ドラフトからは後退したが、それでも軽減効果は小さくない。

 この低燃費車の導入により、中国市場で増大するとみられているのがHEVと簡易ハイブリッド車(MHEV)である。企業ごとに要求されるNEVクレジットは、非NEVの生産・輸入台数に要求比率を乗じて算出される。その要求比率は2019年の10%、2020年の12%に対して、21~23年は毎年2%ずつ上積みされていく見通しで、獲得しなければならないNEVクレジットが増えていく(図1)。

図1 要求されるNEVクレジットの算出に使われる要求比率
図1 要求されるNEVクレジットの算出に使われる要求比率
21~23年は毎年2%ずつ上積みされていく見通し。MIIT(中国工業情報化部)のデータを基に作成した。(出所:IHS Markit)
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 しかも、EVやPHEV、FCVで獲得できる1台当たりのNEVクレジットも減らされる見通し。要求されるNEVクレジットを獲得するには、より多くのNEVを販売する必要が出てくる。そこで注目されているのが、前述の低燃費車だ。低燃費車は、要求されるNEVクレジットの計算式において、0.5台(第2次ドラフトの場合)と見なされ、販売しなければならないNEVの台数を低燃費車に該当しない場合に比べて半減できるからだ。

 ただ、MHEVが低燃費車としてみなされるのは、IHS Markitの推定によると23年まで。CAFCの燃費に対する要求レベルは20年の5L/100kmから25年の4L/100kmに向けて毎年段階的に厳しくなり、24年にはMHEVではその達成が厳しくなると見るからだ(図2)。4L/100kmという燃費の要求レベルは、HEVかそれよりも燃費に優れるクルマでないと満足させることが難しいという。すなわち、デュアルクレジット規制におけるMHEVの賞味期限は、23年末ということになる。

図2 20年の5L/100kmから25年の4L/100kmに向けて毎年厳しくなるCAFCの燃費の要求レベル
図2 20年の5L/100kmから25年の4L/100kmに向けて毎年厳しくなるCAFCの燃費の要求レベル
燃費の要求レベルが高まることで、2024年にはMHEVではその達成が厳しくなる。CAFCは21~25年はフェーズ5という位置づけ。LFCVは低燃費車のこと。MIIT、IHS Markitのデータを基に作成。(出所:IHS Markit)
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