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 「鉄道総研が(現在、建設が進む)リニア中央新幹線に採用された浮上式鉄道の基礎研究に着手したのは50年以上前ですが、現在も開発や研究は継続しています。営業が始まった後も改良を続ける必要があるからです。さらに今は、もう1つの柱としてこの技術を他の分野で役立てるような展開を考えています」と話すのは、鉄道総研で浮上式鉄道技術研究部 部長の長嶋賢氏。長年リニア新幹線に向けた技術開発に携わるエキスパートだ。

図1 山梨実験線を走ったリニアモーターカーの試作車「MLX01」
図1 山梨実験線を走ったリニアモーターカーの試作車「MLX01」
(写真:日経クロステック)
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 2027年の開業に向けたリニア中央新幹線の工事と試験車両開発が進んでいる。JR東海は3月25日、従来より空気抵抗を13%減らした新しい試験車両を報道陣に公開している。

 同新幹線のベースである浮上式鉄道技術は、鉄道総合技術研究所(鉄道総研、東京都国分寺市)とJR東海が共同で開発してきたものだ(図1)。JR東海が開業に向けた技術の仕上げを急ぐ一方、鉄道総研は将来に向けた研究を続けると共に、関連技術を在来方式(鉄輪)の鉄道などへ他分野に幅広く展開する方向へ軸足をシフトしている。長嶋氏の話からこれら多面展開の可能性を紹介しよう。

図2 浮上式鉄道のために開発した技術
図2 浮上式鉄道のために開発した技術
浮上のための超電導磁石、車両への電源供給のための非接触給電、駆動装置であるリニアモーターなどが、他の分野へ展開可能(鉄道総合技術研究所の資料を基に一部編集)
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 浮上式鉄道技術のために重要技術として開発されたのは、超電導磁石、リニアモーター、非接触給電(誘導集電)などだ(図2)。超電導磁石は、車体を浮上させて自重を支える強力な力を生み出す電磁石のために、電気抵抗のない超電導材料を利用。浮上した状態の車体を駆動する技術がリニアモーターであり、さらに車内で使う電力を車外から供給する仕組みが非接触給電となる。

 例えば非接触給電。リニア中央新幹線の試験車はこれまで社内電力のためにガスタービン発電機を搭載していたが、2020年3月にJR東海が公開した改良型試験車ではこれを全面的に廃止。新技術である非接触給電に切り替えた。

 これらの技術はリニア新幹線だけでなく、鉄道をはじめとする他の分野に転用可能だ。浮上式鉄道の建設や運用コストを下げ、普及を促進するという意味ではむしろ積極的に他の分野と共用できる方がむしろ望ましい。