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 「それではいつものように、前回の振り返りから始めましょう。今から皆さんをグループに分けますね」――。社会人向けのビジネススクールを運営するグロービス経営大学院で講師を務める林恭子主席研究員はいつもと変わらない様子で授業を始める。違うのは、普段は受講生たちがいる教室が空っぽという点だ。受講生たちは自宅や職場などから、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(Zoom Video Communications)のビデオ会議サービス「Zoom」を介して授業に参加している。

Zoomを使ってオンラインで授業を進める、グロービス経営大学院で講師を務める林恭子主席研究員。同大学院は4月以降、講師も自宅から授業を実施する形式に順次切り替えている
Zoomを使ってオンラインで授業を進める、グロービス経営大学院で講師を務める林恭子主席研究員。同大学院は4月以降、講師も自宅から授業を実施する形式に順次切り替えている
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 「2020年2月までは通学形式だった授業を3月からオンラインに切り替えたので、受講生には戸惑いもあっただろう。それでもオンラインの授業を体験すると『思った以上に良い』という反応が多かった」。林主席研究員はオンライン授業の手応えをこう話す。中にはZoomのチャット機能で上手に合いの手を入れるなど、新しい形でクラス運営に貢献する受講生も出てきたという。

普段は多くの受講生が集まって授業を受ける教室。2020年3月以降はオンライン授業となり、受講生は自宅などから授業に臨んでいる
普段は多くの受講生が集まって授業を受ける教室。2020年3月以降はオンライン授業となり、受講生は自宅などから授業に臨んでいる
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 新型コロナウイルスの流行拡大に伴い、安倍晋三首相が全国の小中高校に休校を要請したのが2020年2月27日。週明けの3月2日以降、大多数の小中高校が実際に休校を余儀なくされた。グロービス経営大学院も3月中の授業開催が危ぶまれたが、3月2日以降の授業を全て通学からオンラインに切り替え、結果として300近いクラスで1つの休講もなく3月末までの授業をやり終えた。

最大32授業をオンラインで同時開講

 同大学院は以前からオンラインMBAプログラムの受講生などを対象に一部でオンライン授業を開講していたが、大半の受講生には通学形式で授業を提供してきた。もともと2020年3月に予定されていたオンライン授業は36クラス。これに対し同月の通学授業は258クラスと桁違いに多い。にもかかわらず授業の全面オンライン化を決めてから最初の授業を開くまで3日間しかかからなかった。

 そもそも通常のオンライン授業では、パソコン3台やWebカメラ、スピーカーマイクなどから成る講師用の設備一式を、東京・麹町にある同大学院東京校の会議室などに10セット常設していた。パソコンのうち1台は米マイクロソフト(Microsoft)の「Surface」で、授業中に講師が画面に映したスライドに手書きで説明を書き加えられるようにしている。インターネットにつながる回線は毎秒1ギガビットの専用線を2系統引き込んでいる。

 同大学院は仕事をしながらビジネスを学ぶ社会人に向け、平日夜間と土日にほとんどの授業を設定している。東京校では普段、平日夜や土日の授業時はおおむね5~6クラス、東京以外の校舎で実施する授業を含めると、同一時間帯に最大7クラス程度のオンライン授業を実施している。

 休校要請を受け、同大学院は全面オンライン移行で乗り切るための検討を始めた。通学授業をオンラインに移行すると、3月2日からの平日数日間は既存の設備でほぼ対応できるものの、土日の授業数では不足すると分かった。「3月14日土曜日が授業のピークで最大32個の授業が重なる。さらに同じ時間帯にはZoomを使ったオンライン説明会が3つ企画されていた」(河本智史オンラインMBAリーダー)。

グロービス経営大学院の河本智史オンラインMBAリーダー
グロービス経営大学院の河本智史オンラインMBAリーダー
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