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 農機で国内最大手のクボタがデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向け、米マイクロソフト(Microsoft)と複数年の戦略提携を結んだ。同社はかねて、農機ビジネスのグローバルな競争激化を受けDXの推進を公言していた。その同社はなぜマイクロソフトをパートナーに選んだのか。

「AWSかAzureか」だけではなかった検討軸

 「クラウド領域での協業なので、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とマイクロソフトのAzureのどちらがよいかという議論はあった。ただマイクロソフトなら、人工知能(AI)の具体的な活用方法の知見やグローバルのサポート体制を含めたリソースまで活用できる。様々な技術を持つマイクロソフトとDXを一緒に推進できるメリットは大きいと判断した」。

 クボタでデジタル戦略の最高責任者を務める吉川正人副社長執行役員は日経クロステックの単独取材に応じ、マイクロソフトをグローバルの協業先に選んだ理由をそう明かした。

クボタでデジタル戦略の最高責任者を務める吉川正人副社長執行役員
クボタでデジタル戦略の最高責任者を務める吉川正人副社長執行役員
(写真提供:クボタ)
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 クボタにとってマイクロソフトとの提携関係は排他的なものではない。2017年にNTTグループとも戦略提携を結んでおり、ビッグデータを活用した営農支援システム「KSAS」の機能拡充やNTTが持つAI技術の活用などを進めている。マイクロソフトとの戦略提携はそれと並ぶ形となる。

AzureやAI、HoloLensなどを幅広く活用

 クボタは今回の戦略提携を機に、マイクロソフトのサービス基盤を多面的に活用する。第1はクラウドサービス「Azure」だ。クボタが全世界の拠点で2025年までをめどに導入を検討している、欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)「S/4HANA」の基盤として活用する。まずは日米2カ国で2022年までに先行導入し、その後欧州やアジアの拠点にも広げていく。

 これまで同社の世界各地の拠点はM&A(合併・買収)で傘下に収めた海外法人などもあり、個別にERPなどのシステムを導入していた。そのため経営データの統合は必ずしもスムーズでなく、各拠点の情報システムからデータをダウンロードしてExcelで処理していたケースもあるという。S/4HANAでサプライチェーンを統合することで「日本と北米、さらに欧州やアジアも含むデータの統合を進めていける。いつでもどこでも仕事ができるテレワークなどの環境を整えることにもつながる」(同)。

 このほか北米の販売会社で使用する与信管理システムや大阪本社の各種業務で運用しているサーバー、さらには技術部門の機密情報などもクラウドに移行する方針だ。「近年はオンプレミスにサーバーを置くより、クラウド上で管理する方がセキュリティーレベルが高いとみている」(同)。

 第2はAIの活用ノウハウだ。「マイクロソフトのAI担当部門はさまざまな業種の企業とAI活用の取り組みを実施している。例えば、彼らが自動車メーカーなどと取り組んだ品質管理へのAIの取り組みを当社の農機でも生かしたいと考えている」(同)。クボタのディーラーに持ち込まれる修理依頼件数の推移、保守部品の注文件数の推移、SNSでの自社製品に関する書き込みなどをAIで解析し、自社製品に潜む不具合をいち早く察知して対処できるようにしたい考えだ。「今はまだAIについて勉強中というフェーズだが、何らかのシステムを向こう2年ほどで開発していきたい」(同)としている。

 第3は複合現実(MR)ゴーグル「HoloLens 2」などの活用だ。「農機のサービス部門や、水事業におけるポンプのメンテナンス部門などで試験的に購入して、どのように活用できるか検討しているところだ。そうした各現場のデータとクラウド上にあるデータを連携させる検討も始めている」(同)という。