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 空間除菌(東京・千代田)が、2020年3月中旬に予約販売を開始した除菌装置「Devirus AC(デヴィルス エーシー)」。亜塩素酸水を空間に噴霧して、空気中に浮遊する細菌の除菌やウイルスの不活性化をうたう。主に商業施設や食品工場など業務用途としての利用を想定して開発した。最大1.2L/hの噴霧能力を持ち、価格はDevirus AC本体が14万8000円(税別)、噴霧する亜塩素酸水の原液「Klorus」(1L)が5800円(同)。

 「決して新型コロナウイルスを狙ったものではなく、2年前から開発してきた」(同社代表取締役の森久康彦氏)が、新型コロナウイルス感染症拡大が深刻化するさなかでの発売となり、多数の引き合いがきているという。森久氏が製品の詳細や構造、開発の経緯を明らかにした。

亜塩素酸水を噴霧する除菌デバイス「Devirus AC」
亜塩素酸水を噴霧する除菌デバイス「Devirus AC」
200ppm程度に希釈した亜塩素酸水をネブライザーでミスト状にした上で室内に放出する。右にあるのはスケルトンモデル。(写真:日経クロステック)
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空間除菌代表取締役の森久康彦氏
空間除菌代表取締役の森久康彦氏
(写真:日経クロステック)
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大粒ミストの排除は偶然のたまもの

 Devirus ACは、亜塩素酸水を粒径0.5~2μm程度の微細なミスト状にして噴霧する装置。別売の亜塩素酸水(8000ppm)を40倍に希釈(200ppm)した上で内部のタンクに入れて使う。加湿器などに使われているものと同様のネブライザー(噴霧器)を使ってミストを生成。詳細は後述するが、粒径の大きなミストを除外した上でブロアーで機外に送出している。運用の際は、室内の湿度が上がりすぎないように、1時間のうち10分だけ運転するといった間欠運転を推奨している。

 粒径0.5~2μmのミストを選択的に利用しているのは、「ブラウン運動によって空気中を素早く拡散させるため」(森久氏)。Devirus AC1台で、高さ2.5~3m程度で広さ100m2ほどの空間をカバーできるとしている。高さがせいぜい3m程度なのは、ブラウン運動ではそれ以上の高さに拡散しないからという。

 内部の構造は比較的シンプルだ。縦長の本体の上部にPET(ポリ・エチレン・テレフタレート)樹脂製のタンクが配してあり、その下にネブライザーを内蔵したミスト生成モジュールがある。上部のタンクから細いチューブを通って同モジュールに亜塩素酸水を送り込み、ネブライザーでミストを生成。ブロワーでモジュール内に送風すると、生成された亜塩素酸水のミストがじゃばら状のダクトを通って本体上部の送出口から機外に放出される仕組みとなっている。

Devirus ACの内部構造
Devirus ACの内部構造
(写真:日経クロステック)
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ミスト生成モジュール
ミスト生成モジュール
ネブライザーとセパレーターを内蔵。上部からブロワーで空気を送り込むと、ネブライザーで発生させたミストがダクトを通って上部の送風口から吐出する。(写真:日経クロステック)
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 タンクからミスト生成モジュールに送り込む亜塩素酸水の量は、同モジュール内の水位が一定になるように電磁弁で制御している。水位を一定に保持するのは、水位によってミストの粒径分布が変化するためだ。ネブライザーは、市販の加湿器などに使われているものに比べて大きく、1時間当たり4Lのミスト生成能力がある特注品という。

 ミスト生成モジュールのポイントは、上部に設けた「ヘ」の字形をした「セパレーター」にある。これが粒径の大きなミストをふるい落とす役目を果たす。底部のネブライザーによって生成されたミストのうち、粒径の大きなものはブロワーで送り込まれた風に乗ってセパレーターにぶつかり、液滴となって流れ落ちる。一方、ブラウン運動に適した粒径0.5~2μm程度の液滴は、ブロワーの送風に乗って上部のダクトに送り込まれ、送風口から放出されるという。

 実は、当初からブラウン運動を意識していたわけではなく、ミスト粒径の選別は「偶然のたまもの」(森久氏)。ミストの拡散量と拡散時間、および拡散したミストの残留量の経時変化を調べるために試作品の段階で静岡大学情報学部の峰野研究室に調査を依頼。すると、予想以上に迅速かつ広く拡散していると分かった。さらに調べたところ、粒径0.5~2μmのミストが多く、ブラウン運動によって拡散していると推察された。

 どうやら試作品に設けていた板状の部材が、ミストの粒径選別に一役買っているらしいと分かってきた*1。そこで、その後1年ほどをかけて、セパレーターの位置、ブロアー、ネブライザーの位置や条件の組み合わせなどを試行錯誤し、現状の形になったという。

*1 もともと噴霧口から大きな水滴が飛び出すのを防ぐために設置していた。