全1675文字
PR

 スーパーコンピューターで新型コロナウイルスの治療薬や診断法を確立し、感染拡大を封じ込めるーー。先端技術の力で未曽有の事態に立ち向かう動きが日米で本格化してきた。高い演算能力を持つ量子コンピューターを活用する取り組みも始まった。

 「新型コロナウイルスによる国難に対し、稼働準備中の(新型スパコン)『富岳』を前倒しで提供し、1日も早いパンデミックの終結に貢献する」。こう語るのは、理化学研究所(理研)の計算科学研究センターでセンター長を務める松岡聡氏だ(図1)。理研は富岳の共用開始の時期を2021年度からとしてきたが、新型コロナの大流行を受けて「2020年4月から試験的利用を開始した」(理研)。

図1 理化学研究所のスパコン「富岳」
図1 理化学研究所のスパコン「富岳」
(出所:理化学研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 世界に目を向けると、例えば米国では「COVID-19 HPC Consortium」というプロジェクトが立ち上がった。同コンソーシアムは、400ペタFLOPS(1秒当たりの浮動小数点演算回数)以上の処理能力を持つ30のスパコンを開放することで、研究者たちを支援するという。

 同コンソーシアムへの参画企業の1社である米エヌビディア(NVIDIA)のアクセラレーテッドコンピューティング担当ゼネラルマネージャー兼バイスプレジデントであるイアン バック(Ian Buck)氏は、今回の取り組みを「現代のアポロ計画」と表現する。

 Buck氏は「今回のプロジェクトは人類を月に送る競争ではないが、人類のための競争だ。このレースでロケットの役割を負うのはGPUスパコンであり、その燃料は科学者の知識である」と力を込めた。

新型コロナの治療薬を探索

 日本や米国が技術力や科学者を集結して取り組む目的は、新型コロナウイルスの検出や封じ込め、治療のための効果的な方法を一刻も早く開発することだ。

 具体的な取り組みの1例が、新型コロナウイルスの治療薬の探索である。現在、既存治療薬の新型コロナウイルスへの効果を確認する臨床試験が国内外で進められている。だが、試験されている薬剤は数種類と少ない。