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 次世代自動車向けの技術開発を手掛ける米セレンス(Cerence)は、ドイツの電気自動車(EV)メーカーなど3社と共同で、クルマと乗員が母国語で対話できるMaaS(Mobility as a Service)向けの完全自動運転(無人運転)バスを開発した。同車両を用いたデモを、2020年1月に開催された「CES 2020」で行った(図1)。今回はMaaS時代のユーザーエクスペリエンス(UX)に焦点を当て、デモ車両に採用した技術や無人運転車の普及に向けた課題などを解説する。

e.GO Mover
図1 自動運転EVバス「e.GO Mover」
クルマと乗員が母国語で対話できるMaaS向けの無人運転車である。(出所: e.GO MOOVE)
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無人運転はシェアリングサービスから導入

 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)は近年、自動車業界で注目されている技術トレンドである。このうち自動運転とシェアリングカー(共同利用するクルマ)に関しては、最初の完全自動運転(無人運転)車は、個人所有のクルマではなくシェアリングサービス向けのクルマになる可能性が大きい。

 ただ、無人運転を可能にする技術に焦点が当たる一方で、無人運転車とシェアリングカーの未来のユーザーエクスペリエンス(UX)、同環境で人間が果たす役割については、あまり注目されていないように思える。未来に焦点を当て、実証済みの技術と新たな技術の両方を活用し、快適性と信頼感を構築することで、長期的な使用を実現するUXが提供できる。

 交通量と交通事故を削減し、人々をより効率的な手段で移動させる無人運転のシェアリングカーという「エコシスシテム」の目標を達成するには、このシステムに対する乗客の永続的な信用が必要だ。

 例えば、運転者がいないクルマでも、乗客は運転ルートやクルマの情報を受け取ることができたり、人間の運転者と同じように質問できたりすることが望ましいだろう。音声とマルチモーダル・インタラクションは、このようなUXの実現に役立つ。

 さらに、車外にいる人が「スマートガラス」に表示される情報に加えて、音声でクルマに質問できるようになることで、自動運転やスマートシティーを念頭に置いて開発された新しい次元の車載音声アシスタント体験が実現する。このように、交通量や仕事量、環境、利便性の観点から、公共交通機関の効率化の支援が可能となる。