全2947文字
PR
無料セミナー
接触確認アプリ、本当に使う?~公益のための個人データ活用とは 6/8 18時

 日本のIT業界と切っては切れぬ中国のオフショア開発を、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した。中国では2020年1~2月に国内各地で外出規制や外出自粛が相次いだ。

 中国オフショアを得意とするIT企業2社はどう切り抜けたのか。これまでにない局面での取り組みから、中国オフショア開発の新たな課題が浮き彫りになってきた。

セキュリティーと情報共有に課題

 新型コロナウイルスによる感染者が最初に発見された中国・武漢。トランスコスモスは2018年から武漢で日本企業の現地法人を含む中国企業向けのコールセンター拠点を構えている。

 「現時点では中国拠点の稼働は通常時に戻りつつある。これも武漢にコールセンターがあったため、新型コロナに関する情報を早めに収集し、東京の本社や中国の各拠点と連携して対策を進められたためだ」。トランスコスモスの常務執行役員で、中国法人である大宇宙信息創造の董事長も務める中山国慶氏はこう話す。

トランスコスモスの常務執行役員で、中国法人の大宇宙信息創造の董事長も務める中山国慶氏
[画像のクリックで拡大表示]
トランスコスモスの常務執行役員で、中国法人の大宇宙信息創造の董事長も務める中山国慶氏

 同社は中国の天津や蘇州にオフショア開発拠点も持つ。合計で約1500人の現地エンジニアがオフショア開発に従事しているという。

 2020年1月末にトランスコスモスは東京本社に管理部門や人事部門の社員などから成る新型コロナの対策本部を立ち上げ、現地からの情報を基に、武漢および湖北省への渡航中止勧告や中国各地の外出制限を日本から対処した。業務が止まることのないように案件ごとにBCP(事業継続計画)を作成した。

 1月末から4月8日まで2カ月半に及ぶ中国での新型コロナ対応で今後の課題として浮かび上がってきたのは2点あった。セキュリティーと情報共有だ。

 セキュリティーに関してはもともと個人情報など顧客の重要情報を現地エンジニアが触れない仕組みを講じてきた。具体的にはほとんどの案件でオフショア開発拠点と日本の顧客企業との間に専用線を敷き、現地エンジニアはシンクライアント端末で開発を進め、顧客企業のテストサーバーにプログラムなどを納品してきたという。

 今回の新型コロナ対応においては、顧客企業に現地エンジニアが自宅からVPN(仮想私設網)で専用線に接続することを個別に認めてもらって自宅で作業を進めるよう措置した。ただ「今回は在宅勤務に切り替えることで乗り切れた。しかし金融業などセキュリティーの厳しい業界やシステムの内容によってはVPNを使った在宅勤務を認めてくれないケースもあり得る」と中山常務執行役員は言う。

 情報共有の面では、「WeChat」や「Skype」といったビジネスチャットやオンライン会議ツールを使って顧客とオンラインでのコミュニケーションを多用した。ただ「情報共有に限界も感じた」(中山常務執行役員)。

 「短時間で済む用件であれば問題ない。だが、仕様の説明や完成品のレビューなど、確認事項が多岐にわたる場合、ビジネスチャットやオンライン会議は対面での打ち合わせに質が及ばない」(同)。

 仕様説明やレビューにおいては顧客企業のシステム担当者が中国オフショア拠点を訪れて現地エンジニアと対面で打ち合わせをするケースもあった。しかし渡航禁止の状況下ではそうはいかない。今回は難しいながらも時間をかけたり会議を分けたりしながら乗り切ったという。