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 新型コロナウイルスの感染拡大防止の最前線を担う保健所の業務負担の重さが課題になっている。「パンク寸前」と懸念される保健所の負担軽減のため、IT企業がクラウドやAI(人工知能)を活用した支援に乗り出した。

 保健所の新型コロナ関連の業務は体調不良者からの電話相談、帰国者や軽症者のフォローアップ、感染の有無を調べるPCR検査の検体回収、感染経路の推定や濃厚接触者の割り出しといった「積極的疫学調査」、国や県への報告書作成など多岐にわたる。加えて、食中毒調査や結核対策、骨髄ドナー支援対策などの通常業務もある。

 米セールスフォース・ドットコムの日本法人は4月13日、全国の保健所に新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージを9月30日まで無償提供すると発表した。相談記録やPCR検査の調査票、患者や濃厚接触者の観察結果や行動調査記録などを管理・分析できる機能を持つ。これらの情報をデータベース化することで、相談内容種別やPCR検査対象患者一覧の作成、国や県への報告に必要な集計作業などを効率化できる。3月30日に千葉県船橋市の保健所で運用を開始したシステムを、同社のパートナー企業を通じて全国の保健所に展開する。

セールスフォース・ドットコムが提供する新型コロナ保健所業務支援システムの画面イメージ
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セールスフォース・ドットコムが提供する新型コロナ保健所業務支援システムの画面イメージ
出所:セールスフォース・ドットコム

 もともと船橋市役所が同社のクラウドシステムを導入していた。3月上旬、船橋市役所の情報システム課から同社に「保健所の業務支援システムを作れないか」という依頼があった。「新型コロナは刻々と感染状況や対策が変化し、それに応じて保健所の業務内容も変わっている。当社のクラウドサービスは新しい機能や項目を容易に追加できることを市の担当者が知っていたので声をかけてくれた」と小暮剛史執行役員は話す。

 最初に対応したのは体調不良者からの電話相談記録の電子化だった。同保健所には一日に300件以上の電話相談が殺到する。船橋市の保健所では市の応援職員も含めて50人ほどが勤務しているが、電話相談に対応できるのは専門性の高い一部の職員に限られるうえに、他の業務も抱えている。電話相談記録をデータベース化することで、ヒアリングの際の質問の抜け漏れが減る、他事案と比較することで相談事案の重要度を迅速に見極められるといった効果を得られた。

 まず電話相談管理機能を持つ基本システムを1週間で構築した後、調査票出力機能や集計管理機能などを追加した.

ドライブスルー方式のPCR検査にも対応

 船橋市は4月21日、市の医師会と協力して「ドライブスルー方式」のPCR検査外来を始めた。医療機関や帰国者・接触者相談センターが必要と認めた場合のみ予約でき、車に乗ったまま診察や検体採取を受けられる。セールスフォースはPCR検査の管理機能にドライブスルー検査を受ける人の予約日時や携帯電話番号などの情報を記入する項目を設けた。

 さらに軽症者や無症状者はホテルでの宿泊療養や自宅療養が可能になったことを受けて、PCR検査の結果を記入する項目の横に、入院やホテル療養、自宅療養などの対応を記入できるようにした。