職人に出勤させず、リモートでの作業に切り替えて生産活動を続ける町工場がある。東京・江戸川の溶接工場、クリエイティブ ワークスだ。代表の宮本卓氏は「溶接職人にリモートワークへ切り替えてもらった。現場作業のほとんどを自宅でやってもらっている」と話す。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて社会的にリモートワークへ取り組みが進む一方で、その動きに追従しきれない企業がある*。特に町工場は、現場作業なしでは成り立たない以上、縮小稼働か休業しかない――と考えるのが普通だ。ところがクリエイティブ ワークスは、コロナ以前からの2つの取り組みを生かし、リモートワークへと転換した。IoT(Internet of Things)ベースの「溶接キット」と、クラウドを利用したITシステムの導入である。
ごく普通に見える町工場だが…
クリエイティブ ワークスの前身は1962年創業の宮本工業所。宮本氏の実家である。同氏は東京工業大学大学院を卒業後、大手鉄鋼メーカーに就職して約7年間勤めた後に、父の宮本修治氏が経営する宮本工業所に転職、現場で金属加工の技術を習得した。宮本工業所は2016年に解散、卓氏が新たに立ち上げたのがクリエイティブ ワークスだ。
現在、同社では宮本親子と溶接職人の市原萌氏の3人が働く。その現場は、テレビドラマに出てくるような、「ザ・町工場」といったステレオタイプでアナログな雰囲気だ。
同社は、「東京町工場ものづくりのワ」という東京都内の金属加工会社3社による協働コミュニティにも参画する。宮本氏は一般のサラリーマンがクラブ活動的に宇宙開発事業に取り組む「リーマンサット・プロジェクト」の代表理事も務めている。好奇心あふれる宮本氏は、これまで自社にとどまらず、さまざまな人と交流を深め、ITや通信など金属加工に限定しないさまざまな技術に触れてきた。