全2398文字
PR
iPhone SEの分解の様子
iPhone SEの分解の様子
(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

 2020年4月24日に米Apple(アップル)が世界で発売した新型iPhone SE(以下、SE)。外観や機能からiPhone 8(以下、8)の流用部品で作られているのではないかという推測が成り立つが、果たして実際はどうなのか。電子機器の分解・分析を専門とするフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの柏尾南壮ディレクターとともに迫った。

 分解の結果を述べる前に、公開されている仕様からSEと8を比較してみる(図1、表1)。SEのサイズは、液晶パネルが4.7型、外形寸法が138.4mm×67.3mm×7.3mmである。これは外観も含めて8と全く同じ。生体人認証も8と同じく指紋を使うタッチIDであり、iPhone X以降の機種に搭載される顔認証のFace IDは持たない。背面カメラも1個だ。

図1 iPhone 8の外観と11のプロセッサーを持つSE
図1 iPhone 8の外観と11のプロセッサーを持つSE
SEの外観と寸法は8と全く同じである。アプリケーションプロセッサーは11と同じA13を搭載する。(写真:アップル)
[画像のクリックで拡大表示]
表1 iPhone SE、8、11の仕様の比較
表1 iPhone SE、8、11の仕様の比較
[画像のクリックで拡大表示]

 一方で、SEと8の仕様上の違いは大きく2つある。1つは搭載するアプリケーションプロセッサー、もう1つは3Dタッチの有無である。アプリケーションプロセッサーについては、SEが2019年9月に発売したiPhone 11(以下、11)と同じ「A13」を搭載するのに対し、8は「A11」を搭載する。

 3Dタッチは画面へのタッチの押し込みの強さによって操作メニューが変わる機能である。例えばホーム画面で、アプリのアイコンを軽く押すとアプリが起動するが、強く押すと、アプリの削除などのメニューが現れる。iPhone 6sから搭載されている機能で8には入っているが、SEには採用されなかった。ちなみに3Dタッチは、2018年発売のiPhone XRから採用されておらず、11にも搭載されていない。

 以上からSEは、8の筐体(きょうたい)や部品を極力流用しつつ、アプリケーションプロセッサーを最新のものに変更し、3Dタッチがない液晶パネルを採用したと推測できるわけだ。

予想通り「完全に一致」

 分解の結果は、この予想通りのものだった(図2)。まず、筐体は寸分たがわず、SEと8は同じ。筐体内部の溝やネジ穴も完全に一致した。カメラ、Tapticエンジン、スピーカー、Liイオン2次電池パックといった他の部品も、同じ大きさだった。

図2 構造上の違いは3Dタッチ用センサーの有無
図2 構造上の違いは3Dタッチ用センサーの有無
iPhone 8には液晶パネルモジュールを構成する最背面(金属プレートの前)に3Dタッチ用の静電容量センサーが搭載されている。SEにはこれがない。(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

 L字をしたメイン基板もSEと8は同じだったが、基板上に搭載されるチップのレイアウトが異なっている。形状は一致させつつ、基板自体は新たに設計したとみられる。一方で、カメラや液晶パネルなど他の部品とメイン基板を結ぶ、コネクターの位置や形状は完全に一致させている。このため、組み立て作業の再教育は恐らく不要で、検査の工程などもほぼ流用できるとみられる。

 液晶パネルを分解したところ、こちらも予想通り、SEからは8の液晶パネルモジュール内にあった3Dタッチ用の静電容量センサーがなくなっていた。

 分解情報を発信している米iFixitによると、SEに8のカメラやSIMカードトレー、Tapticエンジン、液晶パネルをつなげても問題なく動作したという。SEには3Dタッチのセンサーの制御ICが基板上に実装されていないもようで、3Dタッチを搭載する8の液晶パネルを接続しても、3Dタッチの機能は動作しなかったとする。Liイオン2次電池パックは電池監視用のコネクターがつながらなかったと報告している。ただし、電力供給用の接点は、SEと8で搭載場所も形状も同じである。