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 広島県が主導する製造業のデジタル変革プロジェクトが加速している。「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」だ。地元の自動車メーカー、マツダが編み出した設計・開発手法を基に、最上流の素材研究から設計・開発、生産までのプロセスを革新する。

 同プログラムは自動車だけでなく製造業全般が対象の産官学連携プロジェクトだ。2018年に始動し、地域の製造業のほかSCSKや電通国際情報サービスグループなどのIT企業も参画する。2021年3月までに実証施設を設け、本番導入へギアを1段上げる。

 同プロジェクトの最大の特徴は、マツダが生み出して実践している開発手法「MBD(モデルベース開発)」をフル活用する点にある。MBDとは自動車の設計や開発に関する情報を数値で示したモデルを使い、実車を使わずに開発を進める手法だ。エンジンの燃焼や空力から制御系、乗員の操作や判断、走行環境までさまざまなモデルをつくる。

「プロジェクトの主題はアンダー・ワンルーフ」と語る藤副センター長。産官学の連携からものづくり技術の発展、人材育成まで「一体で取り組む」という。
「プロジェクトの主題はアンダー・ワンルーフ」と語る藤副センター長。産官学の連携からものづくり技術の発展、人材育成まで「一体で取り組む」という。
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 「モデルを土台として柔軟に試行錯誤したり、関係者間の共通言語として意思決定したりできる」。広島大学の藤和久特任教授はMBDの利点をこう語る。藤特任教授は同プログラムの中核メンバーの1人で、同プログラムの拠点として同大学内に設けた「デジタルものづくり教育研究センター」の副センター長を務める。同センターの運営委員会は広島県の湯崎英彦知事が主宰し、マツダの小飼雅道会長が事業責任者を務める。

 例えばエンジン内部の燃焼現象をモデルで再現し「何百万通りもの燃焼パターンを机上で検証できる」(藤副センター長)。部品メーカーとの間でもモデルを共有し、部品の構想段階で性能を予測することで商談の手戻りを減らしているという。マツダが誇るエンジン技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」も「MBDがあってこそだ」(同)。

「MBD」の概要
「MBD」の概要
(出所:マツダ)
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