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 米グーグル(Google)の野望が1つ潰えた。スマートシティー開発を手掛ける兄弟会社のサイドウォークラボ(Sidewalk Lab)はカナダ時間2020年5月7日、同国の都市開発から撤退すると発表した。「監視社会のディストピア」とまで酷評された計画は、市民の懸念を払拭できなかった。プライバシー問題が、グーグルの成長に足かせとなっている。

 サイドウォークラボは、グーグルの親会社であるアルファベット(Alphabet)の傘下企業の1つ。2015年に設立し、2017年からカナダ・トロント市の港湾地区で、データや通信、自動運転車などを活用して都市を便利にする「スマートシティー」の計画を進めてきた(図1)。

図1 自動運転車が走り回るはずだった
図1 自動運転車が走り回るはずだった
サイドウォークラボが描いた構想図。(出所:サイドウォークラボ)
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 サイドウォークラボ最高経営責任者(CEO)のDan Doctoroff氏は計画を断念した理由として、「前例のない経済的な不確実性によって、プロジェクトを財政的に成り立たせるのが難しくなった」と説明し、コロナショックの影響に言及した。

 ただ説明通りには受け取りにくい。かねてプライバシーへの懸念が強く、計画通りにプロジェクトが進んでいなかったからだ。当初の計画をどんどん縮小していた。

 コロナショックによる資金繰りへの懸念がとどめを刺した形のようだが、親会社のアルファベットには多額の手元資金がある。スマートシティー事業に将来性を見込めれば、財政面で支える余力は十分にあったはずだ。現状の延長のままでは事業の成功は無理と見切りをつけたのが実態だろう。

スマートシティーは「不要不急」か

 サイドウォークラボの失敗は、世界各地で進むスマートシティー開発の最重要課題がプライバシーであることを印象づけた。ブラックベリー(BlackBerry)の創業者であるJim Balsillie氏は2018年に、サイドウォークラボの取り組みに対して「監視資本主義の植民地化実験」と手厳しかった。その懸念を乗り越えられるかどうかが開発の成否を左右する。