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 新型コロナウイルス感染症への対応により最前線の医療現場で逼迫(ひっぱく)している各種の医療機器や器具――フェースシールドやマスク、人工呼吸器の部品の製造に、他業種が協力する取り組みが各方面で活発化している。

図 市販のクリアファイルを使えるフェースシールド
図 市販のクリアファイルを使えるフェースシールド
フレームの3Dデータを公開しており、3Dプリンターで造形できる。(出所:大阪大学)
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 その中で改めて目立つ役割を演じていたのが3Dプリンター(アディティブ製造:AM)だろう。医療機器メーカー以外の製造各社が自社の設備で造るだけでなく、大学なども含めた産学連携により3Dプリンター前提の設計・製造データを準備し、公開するといった取り組みも相次ぐ。

 製造開始までの立ち上がりの速さ、場所や数量に関する柔軟性の高さ、3Dデータをベースとした情報共有のしやすさといった3Dプリンターのメリットが、今回の緊急事態への対応の中で生かされている。

設計データの無償公開で幅広く素早く製造

 一口に3Dプリンターと言っても実際はさまざまな手法があるが、基本的に断面形状を積み重ねて立体の成果物を造形していく。そのため金型の設計・製造といった量産に必要な生産設備の準備工数や初期コストが少なくて済む。造りたい部品形状の3Dデータさえあれば比較的短時間で製造を開始でき、造形する部品の数量とほぼ比例したコストで部品を製造できる。

 単品でもすぐに製造を開始できるという点は切削加工も同じだが、3Dプリンターは成果物の形状自由度が高く、形状の複雑さが製造の制約になりにくい。複雑な形状の成果物を造る場合は、加工時間や材料コストの点で3Dプリンターに軍配が上がる場合が多い。例えばフェースシールドのフレームのように全体として細長く、シールド取り付け部などが複雑な形状の部品は、3Dプリンターによる造形が切削加工よりも適している。

 こうした3Dプリンターの長所は今回、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で顕在化した医療用機材、機器の不足に即応する際に威力を発揮した。医療機材を造っていなかった自動車メーカーなどの異業種でも、大きな初期投資なしで迅速に支援物資を製造し、提供できたからだ。