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 新型コロナウイルス感染症の対策に向け、政府がITの活用を進めている。厚生労働省は感染者の情報を一元管理するシステムを2020年5月中にも稼働させる。スマートフォンの近距離無線通信「Bluetooth(ブルートゥース)」機能を使い、感染者と濃厚接触した可能性を通知する「接触確認アプリ」も5月下旬以降に公開予定だ。

 厚労省は内閣官房IT総合戦略室と連携し、全国の医療機関における病床の空き状況や帰国者・接触者外来数、PCR検査の実施状況などを集約するシステムを稼働済み。新型コロナに関する情報を正確に把握するとともに医療機器・資材の状況も収集し、医療機関へ迅速に提供する。

 新型コロナに関する大規模調査もLINEと共同で進める。3月末から5月上旬にかけて既に4回実施。各回とも回答期間は2日だったが、有効回答は平均で2200万人を記録した。得られたビッグデータを分析し、政府の対策に生かす。

 新型コロナ対策におけるIT活用で重要な役割を担うのが、4月6日に発足した政府の「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」だ。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室やIT総合戦略室、厚労省、総務省、経済産業省など関係省庁と連携。民間企業の協力も得ながらITの活用を検討し、早期の開発や導入を図る。「新型コロナ対策のIT活用について海外の状況や民間企業を含む様々なアイデアを検討・評価し、厚労省などにつなぐパイプ役」(平将明・内閣府副大臣)となっている。

 同チームの立ち上げを発案し、事務局長を務める平副大臣に、新型コロナ対策におけるIT活用の現状と将来像を聞いた。

テックチーム事務局長を務める平将明内閣府副大臣
テックチーム事務局長を務める平将明内閣府副大臣
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接触確認アプリで個人は特定できない

 5月8日、政府はテックチームの会合で厚労省が接触確認アプリを開発・実装・運用することを明確にした。スマホOSで寡占的な地位を占める米アップル(Apple)と米グーグル(Google)が5月4日にアプリ開発を保健機関に限るとの方針を示したためだ。

 これまでテックチームが主体となって、一般社団法人コード・フォー・ジャパンや楽天など複数の民間事業者と接触確認アプリの開発や導入に向けた議論を進めてきた。アプリの技術仕様やプライバシー保護の妥当性を検討する有識者会議も設置し、5月9日に第1回会合を開いた。「論点整理や技術開発はほぼ終わり、どんな“生態系”で運用していくかはだいたい固まった。今後は厚労省が主体となるが、テックチームも引き続きサポートしていく」(平副大臣)。