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 トヨタグループの高品質の一翼を担ってきたデンソー。その高品質の看板に大きな亀裂が入った。欠陥燃料ポンプを自動車メーカーに供給し、340万台を超える「メガリコール」の原因となってしまったのだ。なぜ欠陥燃料ポンプを造ってしまったのか。その原因を専門家への取材で追究する。前編は欠陥を起こした直接的な原因「直接原因」を明らかにする。

 デンソーが創業以来の品質の危機に瀕(ひん)している。同社の量産する燃料ポンプで欠陥が発覚。トヨタ自動車(以下、トヨタ)の「メガリコール」の原因となった。トヨタは、件(くだん)の欠陥燃料ポンプを搭載した322万台のクルマをリコール(2020年4月時点)。こうしたリコールでデンソーが負った賠償金(リコール対策費用)は、実に2200億円だ。

 「ひどい金額だ。50年来、こんな巨額のリコール対策費用をデンソーが計上したのは記憶にない」と同社出身の元開発設計者で品質保証に詳しい専門家(以下、品質の専門家)は嘆く。トヨタの社員は規模の大きさにこう憤る。「当社は年間1000万台のクルマを販売している。その3割以上がリコールになったという計算だ」と。

転んで大けがを負った部品の巨人、デンソー
転んで大けがを負った部品の巨人、デンソー
汎用部品である燃料ポンプでつまずいた。新技術のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に気を取られ、足元の「枯れた技術」を軽視したか。(イラスト:穐山 里実)
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 リコール台数はさらに増える可能性がある。燃料ポンプは汎用的な製品で、トヨタ以外の自動車メーカーも使っているからだ。仮に、この欠陥燃料ポンプと同じ設計のものを他の自動車メーカーが使用していた場合、その燃料ポンプを搭載したクルマがリコール対象車となる確率は高い。さらに言えば、この欠陥の原因が設計にある場合、その可能性はより高まる。

 現に、2020年5月初旬にはこの欠陥燃料ポンプがSUBARU(スバル)の北米市場向けのクルマにも搭載されていたことが発覚。これにより、リコール台数は20万2000台増え、342万台を超えた(2020年5月初旬時点)。デンソーは「現時点で想定できる金額を引き当てている」と言うが、リコール台数がその想定を超えれば、デンソーが負う賠償金はさらに増える可能性がある。

 デンソー社長の有馬浩二氏は「経営において品質は生命線。デンソーの創業の原点に立ち返り、品質の向上に努めていく」と2020年3月期の決算発表の席で謝罪した。これに対し、同社OBからは「まるで人ごとのようだ」「会社が潰れてもおかしくないほど深刻な損失」「営業利益を前期比8割減に急落させておきながら、責任を感じないなら経営者失格だ」「少なくとも事業部長クラスは更迭されるだろう」といった厳しい声が上がっている。

デンソー社長の有馬浩二氏
デンソー社長の有馬浩二氏
(出所:デンソーが配信した動画をキャプチャー)
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 日本を代表するメガサプライヤーであるデンソーに、一体何が起きているのか。結論から言えば、「品質不具合の発生を未然に防ぐための基本を怠り、そのしっぺ返しを受けたのだ」と、同社出身の元開発設計者(以下、開発設計の専門家)は指摘する。

枯れた部品に1個当たり6万円の賠償

 「なぜ、こんな枯れた製品(部品)で……」。賠償金額の大きさと併せてデンソーOBを驚かせたのは、リコール原因が以前から使っている部品だったことだ。新規性の高い技術を使うCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連の部品ならともかく、従来部品が巨額リコールを生んだことに衝撃を受けている。

 燃料ポンプの価格(自動車メーカーへの販売価格)はモジュールで1万円程度、燃料ポンプ単体なら2000円程度とみられる。売り上げが1個2000円程度の製品に対し、デンソーは1個当たり6万円超の賠償金を支払うことを余儀なくされたのである。

燃料ポンプ(左)と燃料ポンプモジュールの例
燃料ポンプ(左)と燃料ポンプモジュールの例
「枯れた部品」が巨額のリコールを生んだ。(出所:デンソー)
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 欠陥燃料ポンプには2種類の作動不良がある。[1]低圧燃料ポンプの作動不良と[2]ハイブリッド車(HEV)用燃料ポンプの作動不良だ。原因など順に見ていく。