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 火の車になっている自治体の現場を救え――。2020年4月末から5月にかけて、地方自治体におけるオフィスワークの効率化支援策を打ち出すIT企業が相次いでいる。

 支援策を打ち出しているのは、AI(人工知能)を組み込んだOCR(光学的文字認識)である「AI OCR」の技術を持つベンダーや、手順が決まったパソコン作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のツールベンダーだ。地方自治体は新型コロナウイルス対策の一環で、住民や中小企業に支給する給付金や協力金の支給業務に追われている。

給付金の申請急増を見越し、自治体内の「密」をAI OCRで避ける

 AI OCRベンダーは主に、国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」の申請書類の内容を、自治体職員がパソコンに入力する作業を効率化する支援策を講じている。政府は新型コロナの緊急経済対策として10万円給付を決め、その受付窓口は自治体が担う。そこでAI OCRベンダーは、職員のパソコン入力の手間を省き、AI OCRの読み取り結果を確認・修正だけをすれば済むように支援する。

 AI OCRソフト「AIRead」を手掛けるアライズイノベーションは2020年5月11日、特別定額給付金の紙の申請書の読み取りに特化した「AI OCR(AIRead)特別定額給付金申請書 OCR読取パック」の提供を始めた。AI OCRサービス「Tegaki」を提供するCogent Labs(コージェントラボ)も2020年4月30日、特別定額給付金の紙の申請書の内容をTegakiで自動的に読み取れるようにした。いずれも申請書の全項目を、手書き文字を含めて読み取れるようにしている。

新型コロナウイルス対策として自治体の給付金や協力金の支払い業務を支援するAI OCRベンダーやRPAベンダーの主な動き
ベンダー名取り組みの概要
Cogent LabsAI OCRサービス「Tegaki」で、特別定額給付金の紙の申請書に書かれた手書き文字をTegakiで自動的に読み取れるようにした。具体的にはTegakiを採用した京都電子計算が提供するLGWAN-ASPサービス「AI手書き文字認識サービス」で申請書を読み取れるようにした
アライズイノベーションAI OCRソフト「AIRead」について、特別定額給付金の申請書の読み取りに特化させた「AI OCR(AIRead)特別定額給付金申請書 OCR読取パック」の提供を始めた。ETLツールも含める。3カ月間、読み取り枚数無制限で利用できる。価格は従来の6分の1に設定
NTTデータRPAツール「WinActor」とAI OCRサービス「NaNaTsu AI-OCR with DX Suite」を、2020年7月31日まで自治体に無償提供する。特別定額給付金の申請書の読み取り設定データやRPAで自動化する作業シナリオのサンプルも提供
RPAテクノロジーズ中小企業向け協力金を支給するための愛媛県の業務を一部、伊予鉄総合企画などと共同で支援する。支援する業務は、提供しているRPAツール「BizRobo!」と、グループ会社が手掛けるAI OCRを含むサービス「事務ロボ」を組み合わせて効率化を図る
UiPathRPAツール「UiPath」を、京都電子計算のLGWAN-ASPサービス「自治体向けRPA配信サービス」としても利用できるようにした。AI OCRなど他のLGWAN-ASPサービスと組み合わせて利用した

 AI OCRベンダーが特別定額給付金の申請書を読み取る製品やサービスを相次ぎ提供している背景には、政府や自治体が特別定額給付金の申請方法に紙文書を採用した点が大きい。特別定額給付金の申請はマイナンバーカードを使ったオンライン申請も可能だが、マイナンバーカードの交付率は2020年4月1日で16%にすぎない。

 紙の申請書の受付業務については、職員が書類の内容をパソコンに入力する作業を人手で進めていくと想定される。自治体の職員の多くがオフィスの一角に集まる「密」な状態が起こりやすくなり、職員が新型コロナに感染するリスクも高まってしまう。

 このときAI OCRを使うと、紙の申請書に住民が手書きした文字を高い精度で読み取って、データに変換できる。手入力の手間を省けるわけだ。

 特別定額給付金を所管する総務省は申請書の見本を示しているため、AI OCRベンダーは申請書の読み取るべき項目などをあらかじめ設定したAI OCR製品やサービスを提供し始めた。「自治体のオフィスで密な状態になるのを避けながら、職員のデータ入力の手間を減らし、給付までの時間を短縮できるよう支援する」(Cogent Labs)ことが狙いだ。

 Cogent LabsのTegakiは、インターネットとは隔離された自治体専用のネットワーク「LGWAN(総合行政ネットワーク)」を介したASPサービスでも利用できるようにしている。具体的には京都電子計算がTegakiを採用したうえでLGWAN-ASPサービス「AI手書き文字認識サービス」を自治体向けに提供している。このサービスで、特別定額給付金の申請書を自動的に読み取れるようにした。

 特別定額給付金の特別プランを設けて、最短で申し込み当日から利用できるようにする。「業務効率化につなげられるように導入支援も手厚くしていく」(Cogent Labs)考えだ。また申請書の数が少ない自治体でも利用しやすくするため、申請書の数などに応じた従量課金の料金でも利用できるようにする。