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 印鑑と並んで在宅勤務を阻む一因となっている経費精算の領収書を無くすため、クラウドサービス開発が進んでいる。経費精算クラウド大手のコンカーがPayPayやLINEなど主要なキャッシュレス決済事業者と組み、決済データを経理システムへ直接取り込んで精算できるようにする。新型コロナ危機で在宅勤務が当たり前になりつつある中、経費精算のために出社する「領収書出社」をなくせるか。

 「領収書はビジネスパーソンにとって最も身近な紙の1つ。フル在宅勤務を阻むラストワンマイルを解決する」。コンカーの三村真宗社長は、サービス開発の意義をこう表現する。交通費や飲食を伴う接待交際費、備品の購入費。各種の経費を精算する際、紙の領収書を提出しなければならない企業は依然として多い。結果として各企業の一般社員はもちろん、経費精算業務を担う経理部門も領収書を取り扱うために出社する「領収書出社」を強いられている。

コンカーの三村真宗社長
コンカーの三村真宗社長
(出所:コンカー)
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 現在コンカーが進めているのが、キャッシュレス決済事業者とのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介したシステム連携だ。具体的にはスマートフォンのQRコード決済や電子マネーで経費を精算すると、キャッシュレス決済事業者からAPI経由で決済の利用明細データをコンカーの経費精算クラウドサービス「Concur Expense」へ自動的に取り込む。利用者は紙の領収書を提出したりスキャンしたりせず、ほぼ自動的に経費精算が完了する。

紙の領収書を使った経費精算と利用明細データを使った経費精算の違い
紙の領収書を使った経費精算と利用明細データを使った経費精算の違い
(出所:コンカー)
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 社員は領収書をもらって手元に保存しておいたり月末にのり付けしたりする作業から解放される。経理部門も紙の領収書を社内システムに入力したり、システム上のデータを領収書の内容と付き合わせてチェックしたりする手間がなくなる。一般の従業員と経理担当者、それぞれの領収書出社を撲滅する道が開けるわけだ。

 コンカーは主要なキャッシュレス決済事業者と相次ぎ協業し、各社のシステムとコンカーのクラウドサービスを連携させて利用明細データを取り込めるようにする機能の開発を進めている。まず「PayPay」と2020年6月中に連携を始める。「LINE Pay」とは年内にも連携する計画だ。みずほ銀行の「J-Coin Pay」との連携を決めているほか、「楽天ペイ」とも協議中とみられる。電子マネーについてはJR東日本の「Suica」と2021年に連携を始める。

 例えばPayPayを使ってコンビニで買い物をして経費として支払う場合、PayPayのスマホアプリ上で「経費精算する」というメニューを選ぶ。利用者が代金を立て替える形で支払い、経費精算処理が済むと代金が「PayPay残高」と呼ばれる電子マネーとして利用者に戻ってくる。必要に応じてレシートの写真を撮影して登録することも可能だ。

スマホ決済サービスとの連携の例
スマホ決済サービスとの連携の例
(出所:PayPay)
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 コンカーはスマホ決済や電子マネーとの連携を広げれば、キャッシュレス決済によりタクシーやレンタカーといった従来多かった用途以外にも経費の使い道が増えると期待する。例えば飲食店や小売店での買い物、EC(電子商取引)や食事宅配といったオンライン決済などだ。

 用途を企業需要へ広げたいスマホ決済事業者の思惑とも一致する。「PayPayは日常の様々な場面で使えるスーパーアプリを目指している。ビジネスの領域でもキャッシュレス決済を推進したい」(PayPayの柳瀬将良事業推進室室長)。