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 「新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとなり、医療のAI(人工知能)化やIT化が一気に進む」――。

 内閣府の研究開発事業「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」(以下AIホスピタル事業)を率いる中村祐輔プログラムディレクター(PD)は、これまで進まなかった医療のAI化とIT化の今後について、こう期待を寄せる。中村ディレクターは公益財団法人がん研究会でがんプレシジョン医療研究センター所長も務めている。

開始2カ月で4万人が利用

 同事業で2020年3月18日に始めた、AIアバターを使って個人に合った情報を提供する新サービスを巡っては、開始2カ月間で約4万人が利用したという。もちろん新型コロナウイルス感染症の対策サービスである。

 新サービスの名称は「新型コロナウイルス感染症 相談補助システム」だ。パソコンやスマートフォンのWebブラウザーから専用サイトにアクセスするだけで使える。利用者がAIアバターの質問に回答すると、「帰国者・接触者相談センター、あるいはかかりつけ医に電話でご相談ください」といった自身に合った情報を得られる。個人情報は収集しない。

「AIホスピタル」事業が提供する、新型コロナ対策としてAIアバターを用いて個人に合った情報提供をするサービスの画面
「AIホスピタル」事業が提供する、新型コロナ対策としてAIアバターを用いて個人に合った情報提供をするサービスの画面
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 アバターを使う狙いは「高齢者でも使いやすいようにするため」(中村PD)である。感染症対策に役立ててほしいと、2020年5月10日までの回答結果の概要を国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のWebサイトで公開している。

 オンラインでボットと相談するサービスは、神奈川県がLINEと共同で2020年3月5日に始めたのを皮切りに、各自治体が取り組み始めている。自治体が設けた専用アカウントに、利用者が体調や年齢、既往歴、郵便番号などを入力すると、その人に合った新型コロナウイルス関連の情報を提供する。必要に応じて、帰国者・接触者相談センターへの連絡も案内する。

 これに対し、中村PDは「個人への情報提供だけではなく、AIアバターとのやり取りからトリアージし、必要な患者を医療機関につなぐ流れ」をつくろうと開発したという。ただ、実際には「(政府が決めたルールで)新型コロナ患者の相談は帰国者・接触者相談センターに集約されていたので、そこまでは実装できなかった」(中村PD)。一部で後悔を残す格好となったわけだ。