全2631文字
PR

 新型コロナウイルス感染症の対策に関わる行政情報について、オープンデータとして公開する取り組みがようやく始まった。IT技術者などは検索や抽出といった加工がしやすいというオープンデータのメリットを生かせるようになった。

新型コロナ関連で初となる政府発オープンデータ

 厚生労働省と内閣官房は2020年5月14日、政府として新型コロナ関連で初となるオープンデータを公開した。具体的には20床以上を持つ全国の病院について、「外来診療を受けられるか」や「入院できるか」といった開業状況を日次で集計したオープンデータをCSV形式で提供し始めた。1週間後の5月21日にはJSON形式でデータを取得できるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の提供も始めた。

病院開業状況のインフォグラフィックス。政府がオープンデータを基に政府サイト上に公開している
病院開業状況のインフォグラフィックス。政府がオープンデータを基に政府サイト上に公開している
(出所:内閣官房)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナの感染拡大以降、全国の病院や診療所では初診・通院ともに病院を訪れる患者が極端に減っているという。新型コロナに罹患(りかん)していない一般の患者が院内感染や医療機関の負担増を心配したためとみられている。

 2020年5月25日に緊急事態宣言が全面解除されたとは言え、この点においては医療現場の「非常事態」は今なお続いており、日本医師会が病院の経営危機を訴える事態になっている。

 有志のIT技術者らが公開されたオープンデータを活用すれば、診察を受けられる最寄りの病院を検索できるWebサイトやスマートフォンアプリの開発が進む見通しだ。病院の現状に対する正しい情報発信とともに広まれば、医療現場が正常な機能を取り戻す助けになりそうだ。

 一方で、政府が日々集計しながら、いまだにオープンデータで公開できていない分野も残る。新規感染者や陽性率など新型コロナ感染に関する統計データである。IT化の遅れがオープンデータ化を阻み、集計が後日修正されるなどの不手際が生じている。

病院情報を集約する新システム、突貫工事で開発

 今回、厚労省が短期で病院情報をオープンデータ化できたのは、医療関連の情報を一元集約する情報システムを立ち上げたことが大きい。新システムの名称は「新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS:Gathering Medical Information System on COVID-19)」だ。

 厚労省は政府のIT調達を指揮する内閣官房の支援を受けて企画・調達した。2020年4月に開発ベンダーとして富士ゼロックスを選定し、1~2カ月の短期開発で稼働させた。

 日本で平時において、病院が国や自治体に日々報告するような制度は特にない。厚労省は新型コロナの感染拡大という非常事態を受けて、新型コロナ関連かその他を問わず、政策決定に必要な医療機関の情報提供を呼び掛けた。病院の協力が短期で広がったのは、医療機関の負担を考慮して、病院が政府に対する報告ルートを新システムに一本化した点が大きい。