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 NTTが2030年代の商用化を目指すあらゆる情報処理基盤に光技術を取り込む「IOWN」構想。ネットワークやサーバーのアーキテクチャーの刷新に加えて、サイバー空間に現実空間と同じモデルを作る「デジタルツイン」の実現も大きな柱の1つだ。同社はIOWN構想の一環として、センサーデータをリアルタイム分析し、デジタルツインで未来を予測可能にする「4Dデジタル基盤」の開発に乗り出した。産業横断のデジタルツイン覇権を狙った4Dデジタル基盤は、どのようなメリットをもたらすのか。

4Dデジタル基盤を活用した未来予測によって、将来的には信号のない交差点も実現できるという
4Dデジタル基盤を活用した未来予測によって、将来的には信号のない交差点も実現できるという
(出所:NTT)

交通から電気インフラなど産業横断したデジタルツイン基盤

 「世の中をリアルタイムに把握できるようにするだけではなく、1分後、5分後の未来を予測できるようにする。将来的には信号のない交差点も実現できるだろう」。NTTが開発を進める4Dデジタル基盤の可能性について、NTT研究企画部門の坂井博統括部長はこう強調する。

 4Dデジタル基盤とは、高精度3次元地図情報データベースに現実世界のさまざまなセンサーデータをリアルタイムに反映。デジタル空間で分析した結果を瞬時に現実世界にフィードバックできる機能を組み合わせたものだ。多くのデジタルツインが、工場やビルなど特定用途限定であるのに対し、NTTの4Dデジタル基盤は都市の交通分野からビル内、電気やガス、水道など産業を横断した都市のデジタルツインを作ろうとしている点が特徴だ。

 産業を横断したデジタルツインを構築することで、都市のさまざまな未来を事前に予測できるようになる。環境負荷を抑えた、安心・快適な住みやすい都市を実現することも可能になりそうだ。例えば現実世界のクルマや人の移動情報をリアルタイムに反映することで、「道路の渋滞緩和やビル内のエアコンの自動制御などに役立てられるようになる」と坂井統括部長は語る。

 NTTが4Dデジタル基盤でこだわるのが、デジタルツインの精度の高さだ。「収集するセンサーデータの位置情報や時刻情報にずれが生じると、正確な未来予測ができなくなる」(坂井統括部長)からだ。

 デジタルツインのベースとなる3次元地図情報データベースの作成は、地図大手のゼンリンと組んだ。NTTとゼンリンは20年3月末に資本業務提携を結び、NTTはトヨタ自動車に次ぐゼンリンの第3位株主となった。ゼンリンが持つ住宅・都市の情報を多く含んだ地図作製と、NTTが通信インフラ保守のために培った3次元点群データを活用した全国の空間地図を組み合わせ、これまでにない高い精度のデジタル地図さくせを進める考えだ。

NTT研究所の技術を活用し、精度高める

 収集するセンサーデータの精度を高めるために、NTT研究所が開発したさまざまな技術を活用する。センサーデータの収集は、基本的に高速・大容量で低遅延が特徴の5G(第5世代移動通信システム)を活用するが、センサーデータが参照するGPS(全地球測位システム)の測位や時刻が、場所によっては大きくずれる可能性がある点が課題だ。