政府は2020年5月26日、新型コロナウイルス対策に使う「接触確認アプリ」の仕様書を公開した。6月中旬をめどにリリースする計画だが、仕様書には未確定の「調整事項」も残る。
仕様書公開前日の5月25日、安倍晋三首相は記者会見で「アプリが人口の6割に普及すれば大きな効果を期待できる」という英オックスフォード大学のシミュレーションに言及し、「どうか多くの皆さんにご活用いただきたい」と訴えた。
政府が官民合同会議「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」を設置して本格的なIT活用を始めた4月当初、接触確認アプリを開発していたコード・フォー・ジャパンは5月上旬のリリースを目指していた。その後スケジュールは先送りされ、緊急事態宣言中の仕様公開も間に合わなかった。仕様の内容、並びにこれまでの経緯、今後の課題を追った。
アプリで個人情報は全く集めない
接触確認アプリは近距離無線通信「Bluetooth」を使い、アプリ利用者同士の「接触」をスマートフォンに記録する。接触とは「おおむね1メートル以内の距離で継続して15分以上の近接状態が続いた」ことを指し、その対象者を「接触確認者」と呼ぶ。
仕様書によれば、アプリが記録するのは個人を特定できない識別子だけ。位置情報や電話番号、メールアドレスといった個人情報は取得しない。14日経過した記録は削除するという。
端末間通信や識別子管理といった機能を提供するのが、米アップル(Apple)と米グーグル(Google)が共同開発したAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)だ。同APIは厳格なプライバシー保護策を取っており、感染症対策に必要な個人情報が取得できないとして利用しない国もある。今回、政府は仕様書に同APIの利用を明記した。