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 油圧が見直されるのは、これまでの小さく大きな力を発生する利点に、高い制御性が加わったからだ。さらに変速、圧倒的な「パワーウエイトレシオ」などの特徴を利用すれば、電磁モーターでは不可能なロボットを実現する可能性がある。課題は圧力を生成するポンプ。解決策はあるか。

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 耐衝撃性や瞬発力の他にもモーターでは実現しにくく、ロボットに生かせる油圧の利点は多い。例えば歯車を使わないで、“変速”できることだ。川崎重工業が開発したロボット用油圧シリンダーは可変容量式で、推力とピストン速度を時と場合に応じて変えられる(図5)。

 質量は1.8kgと軽いが、最大推力は6kNと大きく、最大速度は200mm/sと速い注2)。減速比の変化幅は50~150程度に相当するようで、かなり大きい。

図5 電磁モーターで油をシリンダーに送り込む電油方式
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図5 電磁モーターで油をシリンダーに送り込む電油方式
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図5 電磁モーターで油をシリンダーに送り込む電油方式
斜板式アキシャルピストンポンプ。油圧は20MPa。(出所:川崎重工業)

 人型ロボットの動きと“変速”は相性が良い。例えば荷物を持ち上げるときは、推力を大きくする。その分ピストン速度は下がるが、持ち上げるときはゆっくり動くほうが安定する。一方、急ぐときはピストン速度を上げてロボットを走らせる。推力は下がるが、移動中に大きな力を使うことは少ない。

注2)圧力生成には、電磁モーターを用いる。油圧ピストンと一体化した。ポンプは斜板式。

 油圧は今後、さらに力強くなる。代表例がブリヂストンが開発した「人工筋肉」で、質量が100g程度と極めて軽いにもかかわらず、最大12kNと大きな力を発生する。高強度のメッシュ状の繊維で覆ったゴムチューブで構成するマッキベン(McKibben)型を採用し、実現した(図6)。一般的な金属のシリンダー型に比べて、力が10倍くらい大きい。

図6 ゴムチューブをメッシュの繊維で覆ったマッキベン型
図6 ゴムチューブをメッシュの繊維で覆ったマッキベン型
空圧では普通だが、油圧では珍しい。ブリヂストンの資料を基に日経クロステックが作成した。
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 マッキベン型は、油をチューブの端から入れて加圧することで、軸方向に収縮力を発生するもの。チューブの側面全体を覆うメッシュの伸び縮みが力の発生に寄与するため、ピストン面だけが寄与するシリンダー型に比べて力を大きくしやすい。

 空圧でマッキベン型を使うことが多いが、油圧での採用は珍しい。一般に、ゴムは油に弱いからだ。油がゴムの分子間に入り、膨らみやすい。ブリヂストンはニトリル系のゴムに工夫して油が入り込みにくくし、油による膨らみを抑えた。

 マッキベン型だけではなく、シリンダー型の油圧装置の力も今後は強くなる。マッキベン型は、常に最大の力を発生できるわけではない。収縮力は収縮長さと関係し、縮みきったときの力はゼロになる。シリンダー型は収縮長さと関係なく、安定して力を発揮できる。

 例えば東京工業大学教授の鈴森康一氏が2018年に設立したエイチマスルは、シリンダー本体が0.6kgと軽く、11kNと大きな推力を発生するロボット用油圧シリンダーを開発した(図7)。構造材の大部分にマグネシウム(Mg)合金を活用して、軽くした。推力質量比は、モーターでは達成が難しい18kN/kgに達する。

図7 Mg合金を使った軽量な油圧シリンダー
図7 Mg合金を使った軽量な油圧シリンダー
20MPaが普通の油圧をJIS規格外である35MPaまで大きくし、推力を高めた。内閣府が革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「タフ・ロボティクス・チャレンジ」における開発成果。(出所:東京工業大学)
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