全3045文字
PR

 日産自動車(以下、日産)の経営が再び厳しい状況に陥っている。2020年3月期(2019年度)決算は、リーマン・ショック以来の11年ぶりの赤字に転落。同社は新型コロナウイルスの影響を強調するが、主因は世界的な販売不振だ。今や世間の注目は、同社が打ち出すリストラ策「事業構造改革(リカバリープラン)」に集まっている。1999年にカルロス・ゴーン氏〔後に同社の社長兼最高経営責任者(CEO)、会長を歴任〕が打ち出した「日産リバイバルプラン」以来のリストラを断行しなければ、業績復活は見込めないとみられているからだ。

日産社長兼CEOの内田誠氏
[画像のクリックで拡大表示]
日産社長兼CEOの内田誠氏
2020年5月27日に緊急で開催した、ルノー・日産・三菱自動車3社のアライアンス会見の動画キャプチャー。

 日産リバイバルプランで2万1000人の従業員の雇用を犠牲にしてまで業績の「V」字形回復を図った日産が、なぜまた大リストラを要するほど弱体化してしまったのか。トヨタ自動車(以下、トヨタ)からの視点で見てみたい。

 まず、直近では日産が販売台数を追いすぎたことだ。成長を見込める新興国で販売台数を稼ぐべく、新興国の生産拠点に資金をつぎ込みすぎた。半面、新型車の開発への投資を軽視し、「世界的に見て、これは売れるなと思えるクルマがほぼない。フルモデルチェンジまでの期間が長い、いわゆる車齢の長いクルマばかりで特徴に欠ける」と、元トヨタの技術者でA&Mコンサルト経営コンサルタントの中山聡氏は言う。こうした中、日産は特に大きな収益源である米国市場で無理な値引き販売に陥り、利益を減らして、ブランドを毀損(きそん)してしまった。

 かつてトヨタも渡辺捷昭社長時代(2005~2009年)に、世界一になる看板を掲げて販売台数を積極的に追ったことがある。だが、2008年に発生したリーマン・ショックの影響を受けて赤字転落した上、開発・生産面での無理がたたって、後の大規模リコール問題へと発展した。この時の反省から、トヨタは販売台数の明言は避け、現在の豊田章男社長は「いいクルマをつくろう」というスローガンに変えている。

技術だけでは売れない

 トヨタ関係者は異口同音に「日産の技術力は高い」と評価する。昔から日産は「技術の日産」を前面に出してきたが、その看板に偽りはないというのだ。だが、技術だけでは売れないと指摘するのが、元トヨタの技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏である。

日産の独自技術である電動パワートレーン「e-POWER」
[画像のクリックで拡大表示]
日産の独自技術である電動パワートレーン「e-POWER」
ガソリンエンジンで発電した電力を利用してモーターを駆動し、その力で走る。(出所:日経クロステック)

 トヨタでもさまざまな新技術を開発する。だが、それらの技術を織り込んだクルマが世界で売れるとは限らない。「世界の各地域によって顧客のニーズが異なり、欲しいと思われる車種と要らないと思われる車種は違う。従って、そうした地域ごとの詳細なニーズを踏まえたグローバルな営業戦略をしっかりと立てないとクルマは売れない。技術があれば売れるというのは大間違いだ」(藤村氏)。

 現在、トヨタ自動車の戦略はモジュラーデザインである「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を基に進められている。複数のセグメントをまたいで共通化する部分で、走行性能や視認性といったクルマの基本的な機能・性能を引き上げる。一方で、それ以外の非共通部分を可変にし、ここに「地域によって“味付け”を変えた技術を盛り込む」(同氏)という発想だ。