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 AIやビッグデータなどの先端技術を活用し、地域課題の解決を図る都市「スーパーシティ」構想を実現するための国家戦略特別区域法の改正案が2020年5月27日、参院本会議で可決し、成立した。

 キャッシュレス決済や行政手続きのワンストップ化、遠隔教育、遠隔医療、自動運転、ドローン配送など複数分野の技術を組み合わせて住民の生活に実装し、高齢化や観光振興、防災など地域の社会課題の解決を目指す。「個別分野の実証実験ではなく、生活全般にわたり先端技術を活用して住民の暮らしやすい社会、 “まるごと未来都市”を実現する」と内閣府地方創生推進事務局の井上貴至参事官補佐は話す。

 2019年9月に自治体などからアイデアの募集を始め、既に55団体がアイデアを提出した。例えば、ある自治体は運転免許証を自主返納した後期高齢者が急増しており、タクシー台数の少なさと料金の高さから彼らが病院への通院を断念してしまう可能性があるという地域課題を抱える。そこでスーパーシティの枠組みを活用して、後期高齢者の通院対策を図るアイデアを持っている。

ある都市のスーパーシティの案。後期高齢者の通院対策を図る
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ある都市のスーパーシティの案。後期高齢者の通院対策を図る
出所:内閣府

 具体的には、タクシー会社が市民ボランティアの車なども活用しながら、後期高齢者向けタクシー事業を低価格で展開する。ボランティア活動に取り組んだ市民には地域電子通貨でポイントを発行する。加えて遠隔医療・服薬指導などITを駆使した医療ケアと、ボランティアタクシーの配車システムを連動させて、高齢者の適切な通院を通じた社会保障費の抑制を図る。交通のビッグデータを組み合わせれば渋滞などを加味したうえで予約時間に間に合うようにタクシーを配車でき、地域交通の適正化につながる。

各省庁の検討が同時に進むように支援

 こうした案を実現するには複数の省庁にまたがる規制緩和が必要だ。上記の案を従来の国家戦略特区の枠組みで実現するには、提案者が事業計画案の検討段階で複数の省庁と個別に調整しなければならなかった。例えばボランティアドライバーの活用は国土交通省、遠隔医療や遠隔からの服薬指導は厚生労働省、ボランティアポイントの資金決済については金融庁といった具合だ。各省庁との調整により様々な修正が生じた結果、当初計画案を断念したり、大幅な変更を迫られたりするケースが多かった。