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 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、感染者と濃厚接触した可能性を市民に通知するシステムを地方自治体が独自に導入する動きが広がっている。宮城県が2020年5月25日、神奈川県が5月27日に導入したのに続き、大阪府と岐阜県も5月30日までに相次いで導入する。

 いずれもQRコードという枯れた技術を採用したことで、企画から2~3週間程度と短期の導入に成功した。大阪府の場合で「開発費は80万円」(吉村洋文知事)と導入コストもおおむね安い。政府はBluetoothを使った同様のシステムの準備を2020年4月から進めているが、関係者の調整が必要な新技術を使うこともあり早くて6月中旬の導入になる見通しだ。自治体によるQRコード方式が先行している。

 QRコード方式は、施設や店舗に張り出したQRコードを利用して来訪者を把握するため、特定施設でしか濃厚接触を把握できない。Bluetooth方式と比較すると、効果を上げる場面は限定的だ。一方で、新型コロナの感染は施設内で多く発生するとの指摘もあり、集団感染対策には適した特徴も持つ。システムが簡素なこともあり、今後も数多くの自治体が導入に動く見通しだ。

 「施設や店舗を訪れたら、スマホなどでQRコードを読み込む」という習慣が市民の新しい日常生活に溶け込めれば、感染拡大を抑え込む有効な一手になる可能性がある。政府が進めるBluetooth方式の濃厚接触確認アプリと補完的な役割を果たしそうだ。

メールアドレスと施設、来訪日時だけを収集

 QRコードを使った濃厚接触の通知システムは、大阪府の吉村知事が2020年5月12日の会見で導入を表明してから他の都道府県でも検討が広がった。宮城県はいち早く5月25日に「みやぎお知らせコロナアプリ(MICA)」の運用を開始し、まずは密になりやすいライブハウスから採用を呼び掛けているという。現在までに4府県と1市が予定も含めて導入を表明した。

自治体が導入を発表した新型コロナの濃厚接触通知システムの例(2020年5月27日時点)
自治体システム名称運用時期(予定を含む)
宮城県みやぎお知らせコロナアプリ(MICA)2020年5月25日
神奈川県LINEコロナお知らせシステム5月27日
大阪府大阪コロナ追跡システム5月29日の予定
岐阜県岐阜県感染警戒QRシステム5月30日の予定
京都市京都市新型コロナあんしん追跡サービス6月上旬ごろの運用見込み

 導入する自治体はクラスター対策や施設への休業要請を担う都道府県が中心だが、市区町村が独自に導入する動きもある。京都市は市独自のシステムを6月上旬にも導入すると発表した。現時点で京都府はそうしたシステムを導入する具体的な計画を持っておらず、京都市は「市内施設などで感染拡大防止対策を取る必要があると判断した」(総合企画局情報化推進室)と説明する。

 各自治体が採用する仕組みはほぼ同じだ。施設や店舗の運営者は専用サイトで住所や運営者、連絡先などの施設情報を登録したうえで、ユニークなQRコードの払い出しを受ける。これを印刷して入り口などに掲示する。

 施設を訪問した人がスマホなどでQRコードを読み込むと、施設の識別子を加えたWebページが表示される。このWebページで利用者がメールアドレスを登録し、システム運用主体である自治体が各施設の利用者のメールアドレスを収集する。自治体が収集する情報はメールアドレスと訪問した施設、訪問日時の3つだけだ。

 特定の施設を感染者が訪れていたことが疫学調査などで判明した場合は、訪問日時や感染者の発症日を基に、感染リスクが高い状態で濃厚接触した可能性がある人を判定。該当者にメールで知らせる。メールには自治体が運営する新型コロナの相談センターなどの連絡先を記載し、濃厚接触者を健康相談などでフォローする。

岐阜県が導入する濃厚接触通知システムの概要
岐阜県が導入する濃厚接触通知システムの概要
出所:岐阜県
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 神奈川県が導入する「LINEコロナお知らせシステム」は、メールアドレスの登録画面を使わず、メッセンジャーアプリ「LINE」の仕組みを利用する。神奈川県がLINEに開設する新型コロナ対策の市民向けチャンネルに「友だち登録」したうえで、施設に掲示したQRコードを読む。メールアドレスの代わりに利用者を識別するLINEのIDを記録して、濃厚接触の可能性がある人に通知する仕組みだ。LINEの利用が前提になるものの、施設利用時の手続きはより簡便だという。