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 日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」は、半年後の2020年12月に初代の発売から10年を迎える。クルマの寿命を10年とすると、いよいよ使用済み電池(中古電池)の本格的な回収が始まる。ただ、再利用は容易でなく、倉庫に山積みになるリスクも抱える。リーフの中古電池はどこまで再利用できるのか、取り組みの最前線を追った。

初代「リーフ」
初代「リーフ」
(出所:日産)
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 「リーフの中古電池でまったく使えないほど劣化しているものは数%しかない」。こう話すのは、中古電池の再利用事業を手掛けるフォーアールエナジー(以下、4R、横浜市)社長の牧野英治氏である。同氏は日産出身で、リーフのプロジェクトにたずさわる中で4Rの設立を提案した。

4R社長の牧野英治氏
4R社長の牧野英治氏
(出所:4R)
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 4Rは、初代リーフが発売される3カ月前の2010年9月に日産と住友商事の合弁で設立された。大きな目的の1つが、「中古電池の事業化を通じて、EVの残価を高め、EVの販売拡大に貢献すること」(同氏)である。

 「今は中古電池の価値が正しく評価されていない」と同氏は指摘する。本当はまだ使える余地があるのに、その価値を十分に生かせていない。その結果、リーフの中古車価格は過小評価されている。「本来のEVの価値を取り戻したい」(同氏)とする。

 21年から本格的にリーフの中古電池が戻り始める。その量は「年間約5000パック注1)」(同氏)を見込む。

注1)リーフは車両1台に1パックの電池を搭載する。電池1パックは48個の電池モジュールで構成される。

 ただ、中古電池の再利用事業は始まったばかりだ。18年3月に福島県浪江町に開発・製造を担う事業所を設立し、事業を本格化させた。

浪江事業所を18年3月に設立
浪江事業所を18年3月に設立
(出所:4R)
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 19年度(19年4月~20年3月)に同社に持ち込まれたリーフの中古電池は約600パック。一方、販売数量は約300パック注2)にとどまる。再利用は半分に満たない。このままでは21年からの大量回収が始まると、倉庫に電池パックが山積みになるのは避けられない。

注2)過去に回収した電池の販売も含む。

 同社はリーフの中古電池をモジュールに分解し、残容量などの性能の高い順にA、B、Cの3グレードに分けている注3)。そのための測定技術やシミュレーション技術を独自に開発した。測定やシミュレーションには、リーフの車載通信機から集めた電池の使用履歴などのビッグデータも活用しているという。

注3)A、B、Cの具体的な残容量や、在庫に占める比率は非公開である。ただ、目安としてB/Cグレードは残容量が7割以下とみられる。また、Aグレードは現状ではまだ少なく、B/Cグレードが大半を占める。
中古電池をモジュールごとにA、B、Cの3グレードに分ける
中古電池をモジュールごとにA、B、Cの3グレードに分ける
(出所:4R)
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 現状、Aグレードは確実に売れるが、B/Cグレードはなかなか売れない。在庫に占めるA/B/Cグレードの比率から考えると、B/Cグレードの販売が多くなるべきだが、19年度に販売できたのはAグレードが約150パック、B/Cグレードが約150パックだった。電池技術の進化とともにAグレードの⽐率は徐々に増えているというが、B/Cグレードの販路をいかに開拓するかが現状の⼤きな課題といえる。

 Aグレードが確実に売れるのは、現在のメインの販売先が日産だからだ。日産は4Rの技術を把握しており、独自の品質チェックも実施している。中古電池の品質を十分に理解した上で購入する。

 これに対し、B/Cグレードの販売先は多種多様である。4Rは独自に開発したシミュレーション技術を使って、顧客の利用条件に合わせて寿命などの予測結果を無償で提供している。それでも、「中古の電池で本当に大丈夫なのか」「当社でテストをやらせてほしい」、といった懐疑的な声が出るという。このため、「Aグレードに比べて、B/Cグレードの市場開拓には時間がかかっている」(牧野氏)。

 また、中古電池の回収が本格化するのは21年以降であり、現状では供給できる量が限られている。このため、積極的な営業ができず、「慎重に進めざるを得ない」(同氏)という事情もある。