新緑に包まれた庭園風景がパソコンの画面に映し出され、その中にタキシード姿の新郎とウエディングドレス姿の新婦が姿を現した。賛美歌を歌って誓いのキスを交わす2人を画面越しに見守っていると、舞台は突如として月面の映像へと転換。今度はFMラジオ局J-WAVEの音楽番組などで活躍するDJ TARO氏が新郎新婦とともに登場し、披露宴パーティーが和やかに始まった――。
これは、あるカップルが2020年5月24日午後5時からインターネット上で催したオンライン結婚式の一幕だ。新郎新婦は新型コロナウイルスの影響で、5月に予定していたハワイ挙式を断念。代わりに急きょ企画したのがオンライン結婚式だったという。
式では乾杯の音頭やケーキ入刀、ファーストバイトといった挙式の一部始終をインターネット経由でリアルタイムに配信。それを親族友人や勤務先同僚など合計約160人の招待客が遠隔から見届けた。記者も初めてオンライン結婚式の取材だった。
舞台ごと「お色直し」
式には招待客の参加意識を高め、飽きさせない仕掛けが随所にちりばめられていた。例えば招待客向けには専用のライブチャット機能を提供し、各自がお祝いのコメントを自由に投稿したり、ご祝儀の代わりに購入したスタンプでお祝いの気持ちを贈ったりできるようにしていた。
また現在進行中のイベントであると意識させるよう、新郎新婦の友人らによるお祝いの言葉や余興は、ビデオ会議サービスを使って生中継していた。ほかにも背景映像を時折変更し、新郎新婦の「お色直し」と同様に式の雰囲気を変えていくなどの工夫もあった。
当然ながらリアルの結婚式とは異なる部分もあった。例えば映像を視聴する自分以外の招待客の様子が見えないので、式全体の雰囲気をつかみにくい。
このため新郎側と新婦側の招待客があいさつを交わしたり、新郎新婦の親族が目に浮かべる涙を横目で見てもらい泣きしたりするといったリアルの式ならではの「あるある」は難しい。とは言え、緊急事態宣言下で新郎新婦の門出を祝うという目的は十分に達成できたと感じた。