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 トヨタ自動車やスウェーデン・ボルボ(Volvo Cars)などが次世代の自動運転車に搭載することを決めている米エヌビディア(NVIDIA)のAI(人工知能)半導体。多くの大手自動車メーカーが関心を寄せるなか、中国の電気自動車(EV)スタートアップが世界初採用となることが分かった。

 「当社の自動運転向けSoC(System on Chip)『Xavier』を搭載する最初の自動車メーカーは中国・小鵬汽車(Xpeng Motors)になる」。エヌビディアで自動車事業を担当するダニー・シャピロ(Danny Shapiro)氏(Senior Director, Automotive)が明かす(図1、2)。

図1 小鵬汽車の新型EVの“頭脳”はエヌビディアの車載コンピューター
図1 小鵬汽車の新型EVの“頭脳”はエヌビディアの車載コンピューター
エヌビディアが開発した自動運転向けSoC「Xavier」を内蔵するコンピューターを世界で初めて採用した。後輪側に搭載する。(出所:エヌビディア、小鵬汽車)
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図2 小鵬汽車の新型EVセダン「P7」
図2 小鵬汽車の新型EVセダン「P7」
「レベル3」をうたう自動運転機能を搭載する。補助金を適用した後の価格は22万9900元(1元=15円換算で約345万円)から。写真は試験走行の様子。(出所:小鵬汽車)
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 最先端技術は中国から――。小鵬汽車の攻めの姿勢、そしてエヌビディアの選択は、自動車業界の序列が変わり始めたことを意味する。これまでは、最新技術は欧州メーカーから採用し、“枯れた”ころに中国市場に展開していくのが一般的だった。

 変化が起きた理由はいくつかある。まず、「中国の消費者がクルマを評価する目が厳しくなって最新機能が強く求められるようになった」(ある日系自動車メーカーの中国担当役員)。自動運転やコネクテッド機能などの新技術への関心と受容性が高いという。

 中国政府の後押しもある。「レベル3」の自動運転機能を搭載する車両を2020年までに実用化する目標を掲げて開発を支援し、公道実験も積極的に許可してきた。新型コロナウイルスの影響で実用化の時期を5年後ろ倒しにすることを2020年5月に発表しているが、自動運転を推進する姿勢に変わりはなさそうだ。

 もう1つ、序列に変化を起こした大きな要因が、中国メーカーの「目線」が海外に向けられていることだ。特に、新興の中国EVメーカーは、世界を舞台に勝負を仕掛ける意識が強い。ある中国EVメーカーのCEO(最高経営責任者)は、「中国の内需に頼って事業を展開するつもりはない。米テスラ(Tesla)と真っ向勝負して世界市場で成長していく」と語る。テスラなどと戦う武器として、最新技術を積極的に求めるようになった。

2017年にも中国が「世界初」

 序列の変化には予兆があった。今回の同じ構図の出来事が、2017年末に起こっていたのだ。イスラエル・モービルアイ(Mobileye)の自動運転/ADAS(先進運転支援システム)向け画像処理チップ「EyeQ4」の世界初採用を、中国のEVスタートアップ蔚来汽車(NIO)が勝ち取ったのである。

 それまでモービルアイは、世界初の称号を欧州メーカーに与えてきた。モービルアイとエヌビディアという世界有数の自動運転向け半導体を手掛ける2社の決断は偶然の一致ではないだろう。