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 古河電気工業は2020年6月5日、純銅(Cu)の溶接品質を大幅に改善できる「ハイブリッド型」のレーザー溶接技術を開発した。青色レーザーと近赤外レーザーという2種類のレーザー光を組み合わせたのが最大の特徴。主な用途はCuのレーザー溶接が多く使われる電動車両で、2021年1月に製品化する予定である。

 同社によると、今回開発した溶接技術を使うことで、「従来のレーザー溶接に比べてスパッタ(飛散物)の発生率を1/20に抑えられる」(同社ファイテル製品事業部門主幹技師の繁松孝氏)という(図1)。溶接の条件を最適化すれば「ほぼスパッタレスにすることも可能」(同氏)とした。

図1 2種類のレーザーを使う「ハイブリッド型」で欠陥のない溶接に
図1 2種類のレーザーを使う「ハイブリッド型」で欠陥のない溶接に
安定した溶融・凝固を制御できるようになったため、一定の溶接幅を保つことが可能だ。(出所:古河電工)
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 近赤外レーザーを使った従来の溶接技術では、「入熱が安定せず、あるしきい値で突然Cuの溶融が始まり、加工欠陥が発生していた」(同社研究開発本部チームリーダーの行谷武氏)。入熱が安定しないのは、1070nmの波長を使う近赤外レーザーが、Cuに対する光吸収率が4%と低いから。

 一般にCuの光吸収率は短波長になるにつれて向上することから、古河電工は波長が465nmと短い青色レーザーに着目した(図2)。青色レーザーのCuに対する光吸収率は65%と高く、入熱を安定させやすい。熱が安定すれば、加工欠陥が発生しにくい条件でCuを溶融させられる。

図2 Cuに対する光吸収率が高い青色レーザーを活用
図2 Cuに対する光吸収率が高い青色レーザーを活用
従来の近赤外レーザーは光吸収率が4%と低く、入熱を安定させにくかった。入熱が不安定だとCuの溶融を制御できず、加工欠陥が発生する原因となる。(出所:古河電工)
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 ただし、1点にレーザー光を集中させるのは近赤外レーザーの方が得意で、「高品位で深さのある溶接を実現するためには2種類のレーザーを使う必要があった」(繁松氏)。加工の流れはこうだ(図3)。まず、青色レーザー光で広範囲にビームを当てて溶接する箇所を加熱し、その後に輝度の高い近赤外レーザー光による加工を施す。

図3 青色レーザーと近赤外レーザーを組み合わせた
図3 青色レーザーと近赤外レーザーを組み合わせた
青色レーザー光で広範囲にビームを当てて溶接する箇所を加熱した後に、輝度の高い近赤外レーザー光による加工を施す。(出所:古河電工)
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