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 米テスラ(Tesla)が、従来品よりもコストを抑えたリチウムイオン電池を搭載する電気自動車(EV)「モデル3」を中国で量産することが分かった(図1)。単なる車両の改良ではなく、テスラが練る電池の新戦略の一端と位置付けたほうがいいだろう。二人三脚を長年続けてきたパナソニックとの関係にも変化ありそうだ。

図1 テスラのEV「モデル3」
図1 テスラのEV「モデル3」
(出所:テスラ)
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 新たに採用する電池は、リン酸鉄リチウムを正極材に使うリチウムイオン電池である。テスラはこれまで、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウムから成る、いわゆるNCA系の正極材を使う電池をEVに搭載してきた(図2)。NCA系は高容量にできる特徴があり、テスラとタッグを組むパナソニックが得意としてきた。

図2 モデル3のリチウムイオン電池パック
図2 モデル3のリチウムイオン電池パック
車両のモデルによって異なるが、3000~4000本程度の円筒形電池セルを搭載する。電池セルはテスラとパナソニックが展開する米国の電池工場「ギガファクトリー」で生産する。(撮影:日経Automotive)
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 テスラが量産EVでNCA系以外のリチウムイオン電池を採用するは、今回が初めてである。材料価格の高騰が続くコバルト(Co)を使わないリン酸鉄系の電池を選んだ。エネルギー密度ではNCA系に劣るが、コスト競争力が高い。テスラは、すべてをリン酸鉄系のリチウムイオン電池に置き換えるわけではなく、用途や狙いに応じて使い分ける考えのようだ。

目標は21年に年産100万台

 テスラは今、電池戦略の転換期を迎えている。同社CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、革新的な電池技術について発表する「Battery Day」を2020年6月中に開催する意向を示している。長年パナソニックに託してきた電池のサプライヤーについても、新たに中国CATL(寧徳時代新能源科技)や韓国LG化学(LG Chem)と調達契約を結んだ(図3)。

図3 テスラCEOのイーロン・マスク氏
図3 テスラCEOのイーロン・マスク氏
同社は中国・上海に持つEV生産工場「ギガファクトリー3」での車両生産を2019年末に始めた。写真は、同工場の起工式の時の様子。(出所:テスラ)
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 「21年までに年産能力を100万台超にする」――。20年4月末に開いた決算会見でこう宣言したマスク氏。現在の約69万台の年産能力を拡張するために設備投資を進めるのと並行し、EVのコストを抑えて普及価格帯のEVの拡充を急ぐ。リン酸鉄系の電池を搭載するEVを投入する中国市場では、テスラは20年に入って2度もモデル3の価格を引き下げている。

 新電池を備えるEVを生産するのは、テスラの中国・上海工場である。このほど、中国政府から同車両に対して生産の認可が下りた。中国政府の情報産業省にあたる工業和信息化部が公開した文書から明らかになった。