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 新型コロナの流行はエネルギー問題にも影を落としつつある。世界経済の立て直しにはエネルギー需要の回復が欠かせないが、足元の需要減少や油価低迷が原油の採掘や生産に必要な投資を一層鈍らせるおそれがある。国際エネルギー機関が暗に警鐘を鳴らしてきた投資不足による石油危機の到来が早まる可能性がある。

(出所:Adobe Stock)
(出所:Adobe Stock)

 当コラムは石油供給の限界が迫りつつあることを説いてきた(「自動車の電動化を急ぐのは温暖化対策のためだけではない」など参照)。ここにきて発生した新型コロナウイルス感染症の世界的拡大とサウジアラビアによる原油増産宣言が世界経済の悪化に拍車をかけようとしている。

 石油需要が激減し、石油価格が暴落した。石油供給企業の収益は悪化し、経営破綻も続出している。このことが石油供給力の低下を一層深刻化させ、近い将来、石油危機の発生は避けがたい状況にあると筆者は考える。だが、これが世界経済の根深い問題になるという認識は残念ながら、今のところ広く共有されているとは言い難い。

 このような状況下で、石油資源を持たない日本が抱える難題にどう対処すべきかを検討してみたい。

 まず、現在の世界が抱えている石油と経済の重要課題をまとめておく(互いに矛盾する項目もある)。

(1)現在の経済(生活)レベルを維持するとすれば、当分の間は現状の石油供給量維持は最低限必要である。
(2)したがって、突然発生したコロナの傷跡(特に経済)の修復には追加的な石油の緊急的な供給が必要になる。
(3)将来の感染症対策を念頭に医療体制充実の必要性が世界的に高まる。ここにも追加的な石油エネルギーが求められる。
(4)しかし、コロナ騒動により回収可能な原油資源量が減少し、世界で今後の石油供給量が減少する可能性が高い。近い将来のエネルギー不足が重大な懸念となる。
(5)一方で気候変動対策には「脱石油」が求められる。これは長期的課題であり、世界で進み始めている。

世界経済の停滞は始まっていた

 世界経済は新型コロナやサウジの増産問題の発生以前の2019年後半から、減速を始めていた。既に油価が低迷し、石油会社の経営に不安が広がりつつあった。

 2019年10月16日、日本経済新聞は「世界の9割で景気減速、IMFエコノミストが警鐘」と報じた。2020年1月22日の同紙には、「資本主義の再定義探る ダボス会議、格差・環境が転機」とある。

 経済停滞の一因として、現在の世界経済を支えている資本主義の限界が指摘されている。また、環境問題が経済に影響していることも懸念されていた。世界の景気後退は2019年から始まっていたのである。

 新型コロナウイルスとサウジ増産が引き起こした混乱を振り返る(日本貿易振興機構、2020年3月10日レポートから引用)。

・新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界規模で原油需要が縮小することが懸念され、原油価格が1バレル50ドルを割る(2月25日)
・OPEC+(プラス)の減産案にロシアが合意せず協議決裂(3月6日)
・サウジが増産方針を表明。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)終値は1バレル30ドルに(3月9日)