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ARは「最前線の作業者を支援するIT」

 ヘップルマン氏はARについて、新型コロナを念頭に「現場の第1線で働く作業者を支援するIT」と基調講演で位置付けた。「新型コロナをきっかけに、デスクワーカーはデジタルツールによるリモートワークにスムーズに移行できたが、現場に行かなければならない作業者にとってITは助けにならなかった。その現場作業者にデジタルデータを供給する役割を担うのがARだ」(同氏)という。つまりPTCにとってARシステムを提供する意味は、現場作業者の支援にある、と明らかにした。

 新型コロナの拡大期に、PTCはARツール群「Vuforia」のツールの1つ「Vuforia Chalk」を無償で利用可能にした。「Vuforia Chalk」は、空間の特定の位置にチョークで円を描くように印を付け、複数のメンバー間で共有できるツール。遠隔地から現場作業者に対して重要な部位、次に見るべき場所、注意すべき部品などを容易に指示できる。AR担当上級副社長のマイク・キャンベル氏は「専門家が現場ですが隣にいるかのように、重要な指示をはっきりと正確に提供できる」と説明。ヘップルマン氏は「無償利用プログラムでは1万を超える企業がARの利用を開始した。プログラムは2020年8月末まで継続する」と公表した。

 Vuforiaには他にも、現場作業者の支援に使う機能のとして、熟練者や専門的知識のある作業者の動きを3Dで記録するツール「Vuforia Expert Capture」がある(図6)。記録は編集の上でARコンテンツとして利用でき、同じ作業に初心者が取り掛かる際に、スマートグラスなどで熟練者の動きや手順を見たり、熟練者が声に出した確認内容を聞いたりしながら作業を進められる。

図6 PTCのARツール群「Vuforia」
図6 PTCのARツール群「Vuforia」
5つの製品群で構成する。このうち左端の「Vuforia Spatial Toolbox」は「スぺ―シャル・コンピューティング」の開発システム。右から2番目の「同 expert capture」は熟練者の動きや知見の取得、最も右の「同chalk」は遠隔地間での指示や支援を目的としたツール。
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 同氏は「Microsoft Wordは文書をバーチャル化し、Zoomのような遠隔会議システムは労働者の知識をバーチャル化する。CADやPLMは製品設計をバーチャル化し、IoTは実在する製品を号機別にバーチャル化する。それぞれバーチャル化された対象は監視、制御、最適化できる。ARは最前線の作業者をバーチャル化する方法であり、彼らの作業を支援、最適化できる」とも表現した。