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 米PTCは2020年6月にオンラインでイベント「LiveWorx20」を開催した。3D-CADやARといった3DシステムのSaaS(Software As a Service)対応を積極化する方針を示した。新型コロナウイルス感染症対策として各国で実施された外出自粛期間に実用性が明らかになり、ユーザーの需要も増えたとする(図1)。さらに、3D空間と空間内のオブジェクトを扱う計算プログラム作成や、ARコンテンツ開発の基本的枠組みとして「スペーシャルコンピューティング(空間コンピューティング、Spatial Computing)」を提唱。この技術を取り入れた開発ツールを披露した。

図1 PTC社長兼CEOのジム・へプルマン氏
図1 PTC社長兼CEOのジム・へプルマン氏
PTCのオンラインイベント「LiveWorx20」の最初の基調講演の様子。(出所:同社主催のWeb会議)
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新型コロナでもSaaSのCADが利用継続の実績、基盤をARにも転用

 PTCは2019年11月、SaaSで動く3D-CAD「Onshape」を開発企業ごと4億7000万ドル(約500億円)で買収した。同社社長兼CEOのジム・へプルマン(Jim Heppelmann)氏はLiveWorxの基調講演で、Onshapeが新型コロナによる在宅勤務の推進に役立ったと説明(図2)。ユーザーとして自動車部品メーカーのスイス・ギャレットモーション(Garrett Motion)の名前を挙げ、ギャレットモーションの世界中の従業員によるOnshapeの稼働状況について、新型コロナ拡大が進んだ時期にもほとんど変化なく使われ続けていた、と指摘した。

図2 ギャレットモーション社によるOnshapeの稼働状況を示す画面
図2 ギャレットモーション社によるOnshapeの稼働状況を示す画面
新型コロナウイルス感染症の拡大前、拡大時、拡大後を通して稼働状況に大きな変化がなかった。(出所:同社主催のWeb会議)
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 Onshapeは手元のPCやモバイル機器などから利用でき、インストールなどの事前準備が必要ない。へプルマン氏は「リンクをクリックすれば、15秒で設計プロジェクトに参加できる。設定やメンテナンスも不要で、ただ使えばよい」と説明した。データは論理上はクラウド上の1カ所にしかなく、複数メンバーによる共同作業の際は、他のメンバーによる操作内容がそのままリアルタイムで見える(図3)。データをファイルに保存する操作もなく、他のメンバーの変更を上書きで無効にする危険も、他のメンバーがデータを更新するのを待つ必要もない。

図3 Onshapeの説明の画面
図3 Onshapeの説明の画面
遠隔地で相手の保存行為を待つことなく同時並行で作業できる。(出所:同社主催のWeb会議)
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 同氏はまた「CRM(顧客関係管理)やERP(統合基幹業務システム)、その他のほとんどの企業向けソフトウエアがクラウドのSaaSで動く時代なのに、開発・設計ソフトはSaaSへの進出が遅れていた」と指摘。「Onshapeを買収したのはSaaSへの対応を重視したためで、新型コロナへの対応のためではなかった。しかし結果として2019年11月の買収は、これ以上ないタイミングだった」と述べた。